「フフフ……やったわ」

ベッドの上で目覚めた私は最高に気分が良かった。何しろ、思った通り夢の中から私物をこの世界に持ってくることが出来たのだから。

ベッドの上に置かれた戦利品? を早速チェックしてみる。

「えっと……お煎餅、スナック菓子でしょ……おぉ! ちゃんと味噌にお米まであるじゃない」

全て紙袋に戻し、満足して頷くと早速私は食材を持って厨房へと向かった。


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「ステラお嬢様!? な、何故こちらにいらしたのですか!?」

厨房へ現れると、ここの料理長らしき男性が怯えた目で私を見る。他の料理人達も挨拶はしたものの、みんな遠巻きに私を見ている。

「まさか私の料理に不満を感じ、直々に罰を与えに来たのでしょうか……?」

「いいえ。違いますけど?」

ステラは一体どれだけ性悪なのだろう? こんなに大の男を怖がらせるなんて。

「それでは、どの様な御要件でしょうか……」

「実は、これを料理してみたくてね」

私が料理長に差し出したのは他でもない。

「コレは一体何ですか?」

首を傾げる料理長。やはり、この世界には存在していなかったのだ。

「これはね……お米です。これでご飯を炊こうと思って」

「オコメ……ゴハン……? はて、何のことでしょう?」

「説明するよりは作ったほうが早いわ。厨房を貸してくださいね」

「え!? あ、あの!」

料理長が止めようとするものの、構わず私は炊事場へ向かうと腕まくりした。
炊飯器は無くても、鍋でご飯を炊いた経験はある。
そうだ、ついでにお味噌汁も作ろう。

「料理長。お鍋と……あと、厨房にある食材を見せてもらえる? そうだな……野菜がいいかな?」

私の後についてきた料理長に声をかける。

「え? あ……は、はい! 分かりました! おい! ステラお嬢まさのご命令だ!  野菜を持って来い!」

「は、はい!」
「分かりました!」
「すぐに持ってきます!」

お米をといで、分量通りの水を入れたところで私の周りには野菜が並べられていた。

「う〜ん……よし、これにしよう」

早速、包丁を握りしめると味噌汁作りを開始した――


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――午後4時過ぎ。

昼食をとるにしては遅すぎ、夜ご飯にしては早すぎるという変な時間に料理が完成した。

「あ、あの……これは一体何でしょうか?」

料理長が調理台の上に置かれた料理を指差す。他の人たちも物珍しそうに集まっている。

「これはね……おにぎりと具沢山のお味噌汁よ」

皿の上に乗せられた、海苔を巻いた10個三角おにぎりに、野菜の具材がゴロゴロ入ったお味噌汁が鍋に入っている。

「見たこともない料理ですね」
「でも美味しそう……」
「独特な香りがしますね」

集まった人たちは皆関心を持って私の料理を眺めている。今厨房には私を含め、丁度10人の人がいる。

「とにかく、食べてみて?」

早速自ら皿に乗ったおにぎりを手に取り、口にする。

「う〜ん……美味しい! 塩味の利いたご飯に海苔の組み合わせが最高!」

「な、なら頂きます」

料理長もおにぎりを手に取り口に入れる。

「う…う、美味い! な、何だ……こんなにシンプルなのに奥深い味は……!」

感動しまくる料理長につられて、次々と他の人々も手を伸ばし……全員が感動して震えている。
お味噌汁だって好評だった。


「どうだった? 和食の味は」

全員が完食すると、私は料理長に尋ねた。

「ワショク……これはワショクっていうんですか? とっても美味しかったです!」

料理長は興奮気味に頷く。

「そう? なら良かった。後でまたお米を追加で持ってくるから……明日の私の昼食に、今のおにぎりを作ってくれる? 手伝ってくれたので作り方は覚えましたよね?」

「はい、もちろんです。確かに持ち運びには便利な料理ですね。明日のステラお嬢様の昼食に、必ず『おにぎり』をご用意致します」

やった! 明日のお昼はおにぎりが食べられる!
ついでに厨房の人たちとも仲良くなれたし、一石二鳥だ。

料理長の言葉に、満足して頷く私。

まさか『おにぎり』がきっかけで自分が厄介な人物に目を付けられることになるなど予想もせずに――