「な、何でどこにもないの……?」
自室に戻った私は、ある物を探していた。
「普通、どこかにあるはずでしょう?」
引き出しは全て開けて探したし、本棚からは全ての本を取り除いて確認してみた。
それでもどこにも無いのだ。
「何でよ〜!! 普通なら、日記くらい残してあるでしょ〜!!」
気づけば、天井を見上げて叫んでいた。
そう、私が探していたのは日記。ステラの書いた日記帳だ。
「どうしてよ? ここが今流行りの異世界転生モノだとしたら、普通どこかに自分のことを知るための日記帳が存在していいはずでしょう?」
社畜でボロボロ生活だった私でさえ、SNSを使って日々の生活を愚痴っていたのに?
ステラは伯爵令嬢でお金持ちの大学生。当然バイトなんかするはずもない。
暇人の悪役令嬢なら日記ぐらいつけておくべきでしょう?
「うう……恨むわよ。ステラ……この身体に起こったヒントを何も残しておかないなんて……!」
もう日記帳を探すことを断念した私は、ベッドの上にゴロンと横になった。
「……もう悩んでいても仕方ないよね……なるようにしかならないんだから。そうだ……目立たない姿で、私が誰か分からないような姿で……学校に行けば……」
再び何故か強い眠気に襲われた私は、またしても眠りに就いてしまった……。
****
「う〜ん……」
ゴロリと寝返りを打ったところで、不意に私は目が覚めた。目を開けると、見慣れた天井が目に飛び込んでくる。
そこで再び私の頭は覚醒した。
「う、嘘!! ここは!?」
ガバッと飛び起きて辺りを見渡すと、ここは自分の賃貸マンションだった。
「そんな……またここで目が覚めるなんて……」
異常な事態だと言うのに、2回めで私はもう耐性がついてしまったのだろう。意外と冷静な自分がいる。
室内は明るい。時計を見ると、またしても時刻は12時で止まっている。
「まさか、時計の電池切れかな……?」
外の様子が気になり、窓を覗いて今度こそ仰天した。
「そ、そんな……! どういうこと!!」
窓の外は何もない、真っ白な世界。
普通はこの窓からは平均的な住宅街が見えるはずなのに、真っ白な世界なのだ。
「う……何だか怖いな……」
想像してみて欲しい。
上も下も分からない真っ白な世界がどれだけ恐怖かということを。
「で、でも大丈夫! き、きっと目覚めれば……元の世界に戻っているはず……」
何だか複雑な気分だ。ステラとして存在している世界が、今の自分の元の世界だなんて。
「あ、そうだ! いいこと思いついた!」
部屋の中から紙袋を探し出し、入るだけの食料品を詰め込んでいく。スナックやせんべい、飴にチョコレート……そして味噌や醤油といった調味料も忘れない。
そう、これは実験だ。
もし私の仮説が正しければ、この紙バッグを持って眠りに就けば……あの世界に全て持ち込めるはず。
「あ、そうだ。お米も欲しいかも」
お米大好きな私は、毎日と言っていいほどにご飯を口にしていた。それがあの世界に暮らし始めてからは一度たりともご飯を口にしていない。
「やっぱり日本人はお米を食べないとね〜」
鼻歌を歌いながら、ポリ袋にお米を入れられるだけ入れると袋の口を縛った。
「神様、仏様。どうぞこの紙袋ごと全て、あの世界に持ち込めますように……!」
祈りを捧げるとベッドに横たわり、紙バッグをしっかり握りしめて私は目を閉じた。
羊の数を1000ちょっとまで数えたところで意識をなくした――
自室に戻った私は、ある物を探していた。
「普通、どこかにあるはずでしょう?」
引き出しは全て開けて探したし、本棚からは全ての本を取り除いて確認してみた。
それでもどこにも無いのだ。
「何でよ〜!! 普通なら、日記くらい残してあるでしょ〜!!」
気づけば、天井を見上げて叫んでいた。
そう、私が探していたのは日記。ステラの書いた日記帳だ。
「どうしてよ? ここが今流行りの異世界転生モノだとしたら、普通どこかに自分のことを知るための日記帳が存在していいはずでしょう?」
社畜でボロボロ生活だった私でさえ、SNSを使って日々の生活を愚痴っていたのに?
ステラは伯爵令嬢でお金持ちの大学生。当然バイトなんかするはずもない。
暇人の悪役令嬢なら日記ぐらいつけておくべきでしょう?
「うう……恨むわよ。ステラ……この身体に起こったヒントを何も残しておかないなんて……!」
もう日記帳を探すことを断念した私は、ベッドの上にゴロンと横になった。
「……もう悩んでいても仕方ないよね……なるようにしかならないんだから。そうだ……目立たない姿で、私が誰か分からないような姿で……学校に行けば……」
再び何故か強い眠気に襲われた私は、またしても眠りに就いてしまった……。
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「う〜ん……」
ゴロリと寝返りを打ったところで、不意に私は目が覚めた。目を開けると、見慣れた天井が目に飛び込んでくる。
そこで再び私の頭は覚醒した。
「う、嘘!! ここは!?」
ガバッと飛び起きて辺りを見渡すと、ここは自分の賃貸マンションだった。
「そんな……またここで目が覚めるなんて……」
異常な事態だと言うのに、2回めで私はもう耐性がついてしまったのだろう。意外と冷静な自分がいる。
室内は明るい。時計を見ると、またしても時刻は12時で止まっている。
「まさか、時計の電池切れかな……?」
外の様子が気になり、窓を覗いて今度こそ仰天した。
「そ、そんな……! どういうこと!!」
窓の外は何もない、真っ白な世界。
普通はこの窓からは平均的な住宅街が見えるはずなのに、真っ白な世界なのだ。
「う……何だか怖いな……」
想像してみて欲しい。
上も下も分からない真っ白な世界がどれだけ恐怖かということを。
「で、でも大丈夫! き、きっと目覚めれば……元の世界に戻っているはず……」
何だか複雑な気分だ。ステラとして存在している世界が、今の自分の元の世界だなんて。
「あ、そうだ! いいこと思いついた!」
部屋の中から紙袋を探し出し、入るだけの食料品を詰め込んでいく。スナックやせんべい、飴にチョコレート……そして味噌や醤油といった調味料も忘れない。
そう、これは実験だ。
もし私の仮説が正しければ、この紙バッグを持って眠りに就けば……あの世界に全て持ち込めるはず。
「あ、そうだ。お米も欲しいかも」
お米大好きな私は、毎日と言っていいほどにご飯を口にしていた。それがあの世界に暮らし始めてからは一度たりともご飯を口にしていない。
「やっぱり日本人はお米を食べないとね〜」
鼻歌を歌いながら、ポリ袋にお米を入れられるだけ入れると袋の口を縛った。
「神様、仏様。どうぞこの紙袋ごと全て、あの世界に持ち込めますように……!」
祈りを捧げるとベッドに横たわり、紙バッグをしっかり握りしめて私は目を閉じた。
羊の数を1000ちょっとまで数えたところで意識をなくした――