その後、両親からエイドリアンとステラの話を聞かされた。
エイドリアンと婚約をした経緯は、私が一方的に一目惚れしたことがきっかけだった。
2人の出会いはステラの10歳の誕生日の祝いの席。エイドリアンの父親の会社は、父の経営する会社の傘下に置かれている。
そして私の誕生日を祝うためにエイドリアンが父親と屋敷を訪れ、ステラは彼に一目惚れしたらしいが……。
う〜ん……解せない。
ステラはエイドリアンの何処に一目惚れしたと言うのだろう?
顔だってまぁ、そこそこイケてはいるのかもしれないけれど特別イケメンというわけでもない。 もしかすると10年前は美少年だったのだろうか?
それとも、この世界の美の基準が私とは違うのかも知れない。だとしたら納得がいく。
納得がいくかも知れないけれど、やはり私的にはいただけない。
何しろ以前二股をかけられてしまった交際相手に雰囲気が似ているからだ。その上、婚約者である私を前に、あの態度……。
あんな男と婚約を続ける意味などあるのだろうか? いや、はっきり言って無意味だ。
今日だって、せっかく出かけてあの仕打ち。こんなことなら部屋でゴロゴロ過ごしていたほうが余程有意義な時間を過ごせていたはず。
惰眠をむさぼるという、有意義な時間を……。
「どうしたのだ? ステラ。先程から難しい顔をして黙りこんで」
父が心配そうに尋ねてきた。
「あの、お父様」
「どうした? ステラ」
「エイドリアンとの婚約、無かったことには出来ませんか? 立場的にはエイドリアンの家柄よりもこの家の方が優位な立場にいるのですよね?」
「な、何だって!? ステラ、本気で言っているのか!?」
「まぁ! ありえないわ……! まさかステラからそんな言葉が出てくるなんて!」
父も母も目を丸くして驚きの表情を浮かべる。
「あの〜……難しいことなのでしょうか……?」
やはり貴族社会では一度結んだ婚約を解消することは難しいのだろうか? 婚約を解消する決定打が必要なのかもしれない。
「いや、それほど難しいことでは無いが……」
「本当ですか!?」
「ああ、だがステラは本当にそれでいいのか? エイドリアンと結婚できなければ死んでやるとあれほど言っていたのに」
「そんなこともありましたが、過ぎたことです。もう、完全に目が覚めたので」
ええええっ!? ステラ……そんなことを言ったの!? あんな男相手に!?
内心、その言葉に驚きつつも平静を装う私。ここで驚きを見せれば、再びおかしくなったと思われて医者を呼ばれてしまうかもしれない。
「うむ、そうか……よし、なら分かった。こちらから早速婚約解消に向けて話をしておこう」
父は私がエイドリアンとの婚約を解消したいと願い出たことが余程嬉しいのか、ニコニコしている。
「あの、それで時間……かかりそうでしょうか?」
あんな男とは一分一秒でも早く縁を切るに限る。
「大丈夫だ、案ずることはない。元々先方も乗り気ではない婚約だったのだ。喜んで受けるだろう」
「本当ですか? ありがとうございます」
先方も乗り気ではない……その話に何やら釈然としない気持ちが込み上げてくるも、これで縁が切れるなら良しとしよう。
これで問題は解決だ。
「それではお父様、お母様。婚約解消の件、よろしくお願いします」
挨拶して立ち上がり、部屋を出ようとした時母が声をかけてきた。
「お待ちなさい、ステラ。まだ話は終わっていないわよ。大学はどうするの?」
「え? 大学……?」
「もう1週間も休んでいるのだから、そろそろ行ったほうが良いのじゃないの?」
「あ……そ、そうですね」
知らなかった! ステラが大学に通っていたなんて……! 何故誰も教えてくれなかったのだろう?
「まぁ、色々あって行きたくない気持ちも分かるが……淑女たるもの、今の時代は教養も必要だからな。明日は大学へ行きなさい」
色々あって行きたくない気持ちも分かる? 色々……? 色々って何!?
尋ねたくても尋ねられない。
「は、はい……お父様」
父の言葉に不安な気持ちを抱えつつ、返事をした――
エイドリアンと婚約をした経緯は、私が一方的に一目惚れしたことがきっかけだった。
2人の出会いはステラの10歳の誕生日の祝いの席。エイドリアンの父親の会社は、父の経営する会社の傘下に置かれている。
そして私の誕生日を祝うためにエイドリアンが父親と屋敷を訪れ、ステラは彼に一目惚れしたらしいが……。
う〜ん……解せない。
ステラはエイドリアンの何処に一目惚れしたと言うのだろう?
顔だってまぁ、そこそこイケてはいるのかもしれないけれど特別イケメンというわけでもない。 もしかすると10年前は美少年だったのだろうか?
それとも、この世界の美の基準が私とは違うのかも知れない。だとしたら納得がいく。
納得がいくかも知れないけれど、やはり私的にはいただけない。
何しろ以前二股をかけられてしまった交際相手に雰囲気が似ているからだ。その上、婚約者である私を前に、あの態度……。
あんな男と婚約を続ける意味などあるのだろうか? いや、はっきり言って無意味だ。
今日だって、せっかく出かけてあの仕打ち。こんなことなら部屋でゴロゴロ過ごしていたほうが余程有意義な時間を過ごせていたはず。
惰眠をむさぼるという、有意義な時間を……。
「どうしたのだ? ステラ。先程から難しい顔をして黙りこんで」
父が心配そうに尋ねてきた。
「あの、お父様」
「どうした? ステラ」
「エイドリアンとの婚約、無かったことには出来ませんか? 立場的にはエイドリアンの家柄よりもこの家の方が優位な立場にいるのですよね?」
「な、何だって!? ステラ、本気で言っているのか!?」
「まぁ! ありえないわ……! まさかステラからそんな言葉が出てくるなんて!」
父も母も目を丸くして驚きの表情を浮かべる。
「あの〜……難しいことなのでしょうか……?」
やはり貴族社会では一度結んだ婚約を解消することは難しいのだろうか? 婚約を解消する決定打が必要なのかもしれない。
「いや、それほど難しいことでは無いが……」
「本当ですか!?」
「ああ、だがステラは本当にそれでいいのか? エイドリアンと結婚できなければ死んでやるとあれほど言っていたのに」
「そんなこともありましたが、過ぎたことです。もう、完全に目が覚めたので」
ええええっ!? ステラ……そんなことを言ったの!? あんな男相手に!?
内心、その言葉に驚きつつも平静を装う私。ここで驚きを見せれば、再びおかしくなったと思われて医者を呼ばれてしまうかもしれない。
「うむ、そうか……よし、なら分かった。こちらから早速婚約解消に向けて話をしておこう」
父は私がエイドリアンとの婚約を解消したいと願い出たことが余程嬉しいのか、ニコニコしている。
「あの、それで時間……かかりそうでしょうか?」
あんな男とは一分一秒でも早く縁を切るに限る。
「大丈夫だ、案ずることはない。元々先方も乗り気ではない婚約だったのだ。喜んで受けるだろう」
「本当ですか? ありがとうございます」
先方も乗り気ではない……その話に何やら釈然としない気持ちが込み上げてくるも、これで縁が切れるなら良しとしよう。
これで問題は解決だ。
「それではお父様、お母様。婚約解消の件、よろしくお願いします」
挨拶して立ち上がり、部屋を出ようとした時母が声をかけてきた。
「お待ちなさい、ステラ。まだ話は終わっていないわよ。大学はどうするの?」
「え? 大学……?」
「もう1週間も休んでいるのだから、そろそろ行ったほうが良いのじゃないの?」
「あ……そ、そうですね」
知らなかった! ステラが大学に通っていたなんて……! 何故誰も教えてくれなかったのだろう?
「まぁ、色々あって行きたくない気持ちも分かるが……淑女たるもの、今の時代は教養も必要だからな。明日は大学へ行きなさい」
色々あって行きたくない気持ちも分かる? 色々……? 色々って何!?
尋ねたくても尋ねられない。
「は、はい……お父様」
父の言葉に不安な気持ちを抱えつつ、返事をした――