「おはよう、グリアくん!」
「よぉ」
「おはようございます、グリアさん…」
「ああ、オハヨウ」

どうも、校門を過ぎてからグリアに挨拶をする生徒が多い。
しかも、女生徒。
その挨拶に素っ気なく短い返事を返していくグリアだったが、それでも女生徒達は頬を赤らめたり、恥ずかしそうにして足早に通り過ぎる。
どうやら、グリアはモテるらしい。

「驚いたわ…。これもあなたの力なの?」

本気で目を丸くする亜矢だったが、グリアは平然としている。

「何がだよ?」
「いいえ、別に」

確かに、グリアは黙ってさえいれば普通にカッコイイだろうが。
この死神の、人の不幸を楽しむような言動と、その時に見せる凶悪さを浮かべた笑みを皆は知らない。
その時、ドンッと亜矢の背中が軽く叩かれた。
亜矢がハっと顔を向けると、そこには見慣れた友達の姿があった。

「オーッス、亜矢!グリア!」

明るい笑顔を向ける、クラスメイトの白川加也。
だが、亜矢は逆に白川の言葉を聞いて、僅かに暗い表情になる。

(やっぱり、白川の記憶も操作されちゃってるのね)

無邪気な白川の笑顔が、逆に悲しい。

「最近仲いいよな、お前ら。じゃーな、先に教室行ってるぜ!」

そう言って、校舎に向かって走り出す白川。

「ちょ、ちょっと待ってよ白川!?」

引き止める亜矢の声はもう届かず。

「ちょっと、死神っ!」

キっと、隣の死神を睨み付ける。

「なんだよ?」
「あたしとあんたって、どういう関係の設定になってる訳!?」
「ただのクラスメイトだぜ。今の所はな」

ここまでくれば、グリアと同じクラスであるという事は読めていたし、半ば諦め気味に亜矢は思った。
そして、『今の所』って………。亜矢は嫌な予感がした。

「それとも、なんだ?もっと深い関係をお望みか?」

ニヤリとするグリアに、亜矢は必死になって否定する。

「いやっ!やめて、冗談じゃないわ!」

冗談では済みそうにない。
この死神は、不思議な力を使って何でも自分の思い通りにしてしまうからだ。

「しねえよ。今のままでも楽しめるしな。それに、オレの力でも出来ねえ事があるって言っただろ?」

その言葉に深い意味があるという事を、この時の亜矢はまだ気付かない。

(それに…自力で手に入れた方が面白えってモンだろ?)