その頃、亜矢の部屋では。
亜矢のベッドで、静かに眠るコラン。
その傍らでは、リョウが例の黒い本を手に持ち、座っている。
黒い本。それは、魔界と人間界を繋ぐ扉。その本の中からコランが現れた。
リョウは本を見つめながら何かを考えていたが、ふっとコランの寝顔に視線を移す。
(『魂の器』の儀式を完成させる為にも、コランくんの存在は必要だよね)
天使の瞳に、暗い影が落ちる。
(……………ごめんね)
唇だけでそう囁くと、リョウはその本を片手に持ちかえる。
次の瞬間、本を持つリョウの手から青白い炎が燃え上がり、黒い本ごと包んでいく。
それは、一瞬の出来事だった。
リョウの手の中で、音もなく黒い本は消滅した。
コランはそのまま亜矢のベッドで一晩眠り続けた。
悪魔は、眠りながら側にいる人間の生命力を吸収するとの事だった。
コランの事を思った亜矢は一緒の布団に入って寝た。いわゆる『添い寝』である。
そのおかげもあってか、次の日の朝にはコランはすっかり元気になっていた。
だが、コランは何やら朝から騒いでいる。
「ない、ない!!どうしよう、アヤー!!」
いきなり泣きついてきたコラン。とりあえずコランの体を抱き返しながら、何事かと亜矢は聞く。
コランは目に涙を浮かべながら、必死に伝える。
「本がっ………本がなくなっちゃったんだ!!」
「本?本って、コランくんが出て来た、あの黒い本の事?」
そういえば昨日、リョウにあの本を手渡して以来、見かけていない。
「よく分からないけどっ…、消滅しちゃったみたいだ!どうしよう、あの本がないと、オレは魔界に帰れないんだ!!」
「え、ええっ!?」
思わぬ事態に、コランをなだめる事も忘れ、硬直する亜矢。
どうしてこう、次から次へと思わぬ展開になるのだろうか。
何者かの陰謀ではないかと疑いたくなるくらいだ。
「コランくん、よく考えて。他に帰れる方法はないの?」
自分まで心乱していては解決しない。亜矢は何とか心を落ち着かせながら聞く。
「沢山の生命力を集めれば本を再生する事も出来るけど…」
シュン、と下を向いて言うコラン。
何か嫌な予感がする。もう、今まで何度も感じてきたこの予感。
まさか今回も的中してしまうのだろうか。
「沢山って、どれくらい?」
恐る恐る亜矢が問いかける。
「1人の人間に対して言えば、1年分くらい」
予感、的中。
亜矢はもう、今の時点で深く考える事を止めた。こうなったら、先に進むしかない。
変な前向き思考が生まれた。
「コランくん………、あたしの部屋に一緒に住む?」
「……!?いいのかっ!?」
パっと、コランは瞳を輝かせる。
(本が消滅してしまったのは、あたしが無理な願い事をしたせいかもしれないし…)
そういう責任感もあった。
だが、何よりも。
コランが人間の生命力を吸収すると、吸収された人間は死んでしまう。
そう、命を落とさずにコランに生命力を与え続けられる人間は、特別な心臓を持つ亜矢、ただ1人しかいないのだ。
「よろしくな、アヤ!!」
「コランくん、とりあえずその背中の羽根、隠せない?」
「あっ、そうか!!む〜〜〜」
ポンッ☆
「どうだ?これで羽根、消えたか?」
「片っぽだけよ!もう片方が残ったままよ!」
「あ、あれ??じゃあ、これでどうだ!?」
どうやら、小悪魔との生活にもまた、波乱がありそうな予感。
しかし、これで亜矢は一年間、生き続けなくてはならない理由と義務が出来た。
言い換えれば、『魂の器』の儀式を途中で止めたり、拒否する事は出来なくなったのだ。
コランを魔界に帰してあげる為にも、少なくとも一年間は生き続けなければ。
結果的に、全ては『魂の器』の完成に向かって進んでいく。
だが、亜矢は気付いていない。
全ては、背後で動く何かの存在の思惑通りに動かされているのだという事を。
亜矢のベッドで、静かに眠るコラン。
その傍らでは、リョウが例の黒い本を手に持ち、座っている。
黒い本。それは、魔界と人間界を繋ぐ扉。その本の中からコランが現れた。
リョウは本を見つめながら何かを考えていたが、ふっとコランの寝顔に視線を移す。
(『魂の器』の儀式を完成させる為にも、コランくんの存在は必要だよね)
天使の瞳に、暗い影が落ちる。
(……………ごめんね)
唇だけでそう囁くと、リョウはその本を片手に持ちかえる。
次の瞬間、本を持つリョウの手から青白い炎が燃え上がり、黒い本ごと包んでいく。
それは、一瞬の出来事だった。
リョウの手の中で、音もなく黒い本は消滅した。
コランはそのまま亜矢のベッドで一晩眠り続けた。
悪魔は、眠りながら側にいる人間の生命力を吸収するとの事だった。
コランの事を思った亜矢は一緒の布団に入って寝た。いわゆる『添い寝』である。
そのおかげもあってか、次の日の朝にはコランはすっかり元気になっていた。
だが、コランは何やら朝から騒いでいる。
「ない、ない!!どうしよう、アヤー!!」
いきなり泣きついてきたコラン。とりあえずコランの体を抱き返しながら、何事かと亜矢は聞く。
コランは目に涙を浮かべながら、必死に伝える。
「本がっ………本がなくなっちゃったんだ!!」
「本?本って、コランくんが出て来た、あの黒い本の事?」
そういえば昨日、リョウにあの本を手渡して以来、見かけていない。
「よく分からないけどっ…、消滅しちゃったみたいだ!どうしよう、あの本がないと、オレは魔界に帰れないんだ!!」
「え、ええっ!?」
思わぬ事態に、コランをなだめる事も忘れ、硬直する亜矢。
どうしてこう、次から次へと思わぬ展開になるのだろうか。
何者かの陰謀ではないかと疑いたくなるくらいだ。
「コランくん、よく考えて。他に帰れる方法はないの?」
自分まで心乱していては解決しない。亜矢は何とか心を落ち着かせながら聞く。
「沢山の生命力を集めれば本を再生する事も出来るけど…」
シュン、と下を向いて言うコラン。
何か嫌な予感がする。もう、今まで何度も感じてきたこの予感。
まさか今回も的中してしまうのだろうか。
「沢山って、どれくらい?」
恐る恐る亜矢が問いかける。
「1人の人間に対して言えば、1年分くらい」
予感、的中。
亜矢はもう、今の時点で深く考える事を止めた。こうなったら、先に進むしかない。
変な前向き思考が生まれた。
「コランくん………、あたしの部屋に一緒に住む?」
「……!?いいのかっ!?」
パっと、コランは瞳を輝かせる。
(本が消滅してしまったのは、あたしが無理な願い事をしたせいかもしれないし…)
そういう責任感もあった。
だが、何よりも。
コランが人間の生命力を吸収すると、吸収された人間は死んでしまう。
そう、命を落とさずにコランに生命力を与え続けられる人間は、特別な心臓を持つ亜矢、ただ1人しかいないのだ。
「よろしくな、アヤ!!」
「コランくん、とりあえずその背中の羽根、隠せない?」
「あっ、そうか!!む〜〜〜」
ポンッ☆
「どうだ?これで羽根、消えたか?」
「片っぽだけよ!もう片方が残ったままよ!」
「あ、あれ??じゃあ、これでどうだ!?」
どうやら、小悪魔との生活にもまた、波乱がありそうな予感。
しかし、これで亜矢は一年間、生き続けなくてはならない理由と義務が出来た。
言い換えれば、『魂の器』の儀式を途中で止めたり、拒否する事は出来なくなったのだ。
コランを魔界に帰してあげる為にも、少なくとも一年間は生き続けなければ。
結果的に、全ては『魂の器』の完成に向かって進んでいく。
だが、亜矢は気付いていない。
全ては、背後で動く何かの存在の思惑通りに動かされているのだという事を。