そして、その日の下校時間。
グリアは美保を追って外へ出て行き、二人とも昼休み以来教室に戻らなかった。
亜矢は帰り道を一人で歩いている。
だが、ふいに帰路とは反対方向に足を進めようとした。
(やっぱり、心配だわ。死神はともかく、美保の事が…!)
もしかしたら、グリアは未だに美保を見つけられていないのかもしれない。
そう思って、勢いよく反対方向に振り向いた瞬間。
ドンッ
後ろを歩いていたらしい人と正面からぶつかってしまった。
「きゃっ…ごめんなさい!……あなたは!」
その人は、昨日道で偶然出会ったグリア似の少年だった。
「ううん、大丈夫。……あ。亜矢ちゃん」
相変わらず馴れ馴れしく『ちゃん』付けで呼んでくる少年。
だが、そのグリアと比べれば天使の微笑みとも言える笑顔に、不快感は全く感じられない。
「ボクの名前は『リョウ』だよ。そんなに慌ててどうしたの?」
「友達を捜しに行くのよ。ちょっと心配な事があって」
「ふうん、ボクは亜矢ちゃんの方が心配だな。もうすぐ命の力が切れる時間じゃないの?」
「!!」
亜矢は目を見開いてその少年の顔を見返した。
何故、その事をこの少年は知っているのか。
何かを見透かされているような不思議な瞳から、何故か目がそらせない。
「お友達じゃなくて、グリアを捜しに行った方がいいんじゃない?」
「な、なんでその事を知ってるの?死神の名前まで。あなた一体………」
そこまで言いかけた時、亜矢の体勢がガクっと崩れ、地面に膝をついた。
「あっ……どうしよう、こんな時に………」
亜矢は苦しそうに息を荒くする。命の力が尽きかけているのだ。
こういう時の為に、いつもグリアとは行動を共にしなければならなかったのだ。
「亜矢ちゃん、大丈夫?」
リョウがしゃがみ、心配そうに亜矢の顔を覗き込む。
だが亜矢は力を振り絞って立ち上がると、ゆっくりと歩き出したのだ。
「美保を……捜しに行かなきゃ………」
リョウは微かに驚きの色を瞳に浮かばせた。
「それよりも、グリアを捜さなきゃ君の命が尽きちゃうよ!?」
リョウの言ってる事はもっともな事。だが亜矢は歩みを止めない。
「美保はきっと辛いはずだ………わ。はやく…はやく捜して誤解を解かな……きゃ……」
だが、ついに歩く力も失い、亜矢の体は地に向かって落ちかけた。
とっさに、リョウが亜矢の体を支える。
そのまま道の端に寄り、なるべく人目につかないようにした。
「君だって辛いだろうに……」
リョウは静かな口調で言う。
自分の事よりも、人の事を優先する、真直ぐで心優しく強い少女。
でも、仮の心臓しか持たない亜矢は、いつでも尽きてしまう不安定な命。
「なんでグリアが君を生かしたのか分かった気がするよ」
すでに意識が遠くなり、リョウの声は聞こえていないであろう亜矢。
頬にかかっている彼女の髪をそっと手でよけると、今度は自分の髪をかきあげた。
「『命の注入』は得意じゃないんだけどな」
リョウは少し困った顔をすると、ふうっと小さく息をついた。
「ボクがやるしかない…よね」
亜矢に水色の髪がかからないように、片手で髪を押さえつつ、リョウは自分の顔を亜矢の顔へと近付ける。
「おい、待ちやがれ!!」
突然聞こえて来た怒声に、リョウは顔を上げた。
グリアは美保を追って外へ出て行き、二人とも昼休み以来教室に戻らなかった。
亜矢は帰り道を一人で歩いている。
だが、ふいに帰路とは反対方向に足を進めようとした。
(やっぱり、心配だわ。死神はともかく、美保の事が…!)
もしかしたら、グリアは未だに美保を見つけられていないのかもしれない。
そう思って、勢いよく反対方向に振り向いた瞬間。
ドンッ
後ろを歩いていたらしい人と正面からぶつかってしまった。
「きゃっ…ごめんなさい!……あなたは!」
その人は、昨日道で偶然出会ったグリア似の少年だった。
「ううん、大丈夫。……あ。亜矢ちゃん」
相変わらず馴れ馴れしく『ちゃん』付けで呼んでくる少年。
だが、そのグリアと比べれば天使の微笑みとも言える笑顔に、不快感は全く感じられない。
「ボクの名前は『リョウ』だよ。そんなに慌ててどうしたの?」
「友達を捜しに行くのよ。ちょっと心配な事があって」
「ふうん、ボクは亜矢ちゃんの方が心配だな。もうすぐ命の力が切れる時間じゃないの?」
「!!」
亜矢は目を見開いてその少年の顔を見返した。
何故、その事をこの少年は知っているのか。
何かを見透かされているような不思議な瞳から、何故か目がそらせない。
「お友達じゃなくて、グリアを捜しに行った方がいいんじゃない?」
「な、なんでその事を知ってるの?死神の名前まで。あなた一体………」
そこまで言いかけた時、亜矢の体勢がガクっと崩れ、地面に膝をついた。
「あっ……どうしよう、こんな時に………」
亜矢は苦しそうに息を荒くする。命の力が尽きかけているのだ。
こういう時の為に、いつもグリアとは行動を共にしなければならなかったのだ。
「亜矢ちゃん、大丈夫?」
リョウがしゃがみ、心配そうに亜矢の顔を覗き込む。
だが亜矢は力を振り絞って立ち上がると、ゆっくりと歩き出したのだ。
「美保を……捜しに行かなきゃ………」
リョウは微かに驚きの色を瞳に浮かばせた。
「それよりも、グリアを捜さなきゃ君の命が尽きちゃうよ!?」
リョウの言ってる事はもっともな事。だが亜矢は歩みを止めない。
「美保はきっと辛いはずだ………わ。はやく…はやく捜して誤解を解かな……きゃ……」
だが、ついに歩く力も失い、亜矢の体は地に向かって落ちかけた。
とっさに、リョウが亜矢の体を支える。
そのまま道の端に寄り、なるべく人目につかないようにした。
「君だって辛いだろうに……」
リョウは静かな口調で言う。
自分の事よりも、人の事を優先する、真直ぐで心優しく強い少女。
でも、仮の心臓しか持たない亜矢は、いつでも尽きてしまう不安定な命。
「なんでグリアが君を生かしたのか分かった気がするよ」
すでに意識が遠くなり、リョウの声は聞こえていないであろう亜矢。
頬にかかっている彼女の髪をそっと手でよけると、今度は自分の髪をかきあげた。
「『命の注入』は得意じゃないんだけどな」
リョウは少し困った顔をすると、ふうっと小さく息をついた。
「ボクがやるしかない…よね」
亜矢に水色の髪がかからないように、片手で髪を押さえつつ、リョウは自分の顔を亜矢の顔へと近付ける。
「おい、待ちやがれ!!」
突然聞こえて来た怒声に、リョウは顔を上げた。