次の日。
昨日のグリアの発言も気になるが、まずは美保の事である。
正直、相手が死神という事で素直に応援する気になれない。
むしろ、死神に近付く事によって美保が不幸な目に合ってしまうのではないかと、亜矢はそれが心配だ。
(無駄かもしれないけど……美保を説得してみよう)
昼休みになり、亜矢は美保を説得するべく彼女の元へ向かった。
だが、教室内に美保の姿が見当たらない。
亜矢はノートを取るのが遅れてチャイムが鳴って少ししてから席を立った。
どうやら美保は、先に教室を出てしまったようだ。
よく見れば、昼時になるといつも亜矢にたかり、パシリさせる死神の姿もない。
亜矢は何か胸騒ぎを感じ、急いで教室を出た。
校内のあちこちを探して回り、ついには校舎の外にまで出た。
予想通りだった。
校舎の裏、人気のない中庭に、美保とグリアの姿があった。
二人の姿を発見した亜矢は、とっさに物陰に隠れて二人の様子を見る。
「悪ぃが、オレ様はあんたに興味はねえよ」
どうやら、すでに美保がグリアに告白してしまった後の会話のようだ。
それにしても、あんな言い方はないだろう、と亜矢は物陰で一人腹を立てた。
「そんな……グリアくん、好きな人とかいるの?」
美保がそう聞いた瞬間、グリアの視線がふっと亜矢の方に向けられた。
すでに気付かれている。亜矢はその場所から鋭い視線をグリアに返した。
美保に対しては背中、後ろの方の位置にいる為、美保には気付かれてない。
「興味のあるヤツはいるな」
そう言うなり、グリアは歩きだし、美保の横を通りすぎて亜矢の方へと進んだ。
美保は呆然とグリアを目で追う。
だんだんと近付いてくるグリアに対し、隠れていた亜矢は今さら逃げ出す事も出来ず、思考だけが駆け巡る。
(な、何!?どういうつもりなの!?)
目の前でグリアが立ち止まったと思った瞬間。
グイッ!!
「きゃっ!?」
いきなり強い力で腕を掴まれ、引っ張られ、亜矢は思わず声を上げた。
二人の目の前に引きずり出された状態の亜矢。
「あ、亜矢!?」
美保も目を丸くしている。
未だ、亜矢の腕を強く掴んだままのグリアを、亜矢は睨み付けた。
「ちょっとあんた、どういうつもり……」
そこまで言って、次の言葉は塞がれた。
掴まれた腕に体ごと引き寄せられたと思ったら………
一瞬にして口を、塞がれた。
いつもなら『口移し』と称するその行為で。
その場の時が止まったかと思った。
「やっ……!」
亜矢は腕を突っ張り、グリアを引き離した。
だが、亜矢がまず目を向けたのはグリアでなく、美保の方。
美保は放心したかのように、こちらを見つめている。
「……何で?亜矢は、グリアくんとは何でもないんじゃなかったの…?」
力なく、そう呟く。
「美保……ち、違う……本当に違……」
だが、どう否定すればいいのか分からない。
誤解を招くようなグリアの行為も、グリアと自分の関係も。
何も言えない、説明できない。そんな自分がもどかしくて。
何も発する事が出来ない亜矢の口はただ、小さく開いたまま。
「と、いうワケでな。あんたに構うヒマはねえのよ」
そんな中で、グリアが一人、いつもの口調で言う。
「もう、訳分かんないよっ!!」
美保は叫ぶと、二人に背を向けて走り出した。
「美保ッ!!」
亜矢も叫ぶが、美保はそのまま校門を抜け、外へと飛び出して行ってしまった。
亜矢は自分も走り出そうとしたが、ハっと足を止めてグリアの方を向いた。
「………どうしてあんな事したのよ」
亜矢は表情が見えないくらい顔を伏せ、その声は重く低い。
「ああ?今日の『口移し』がまだだっただろ?」
グリアは、いつもと全く変わらない調子で言う。
「そんなの、この場でしなくてもいいじゃない」
「知るか。オレ様の気分だ」
パシッ!!
グリアの顔が少し、横へ弾かれた。
亜矢の右手が、グリアの頬に当たり、小さく響いた。
グリアはすぐに亜矢の方に向き直ったが、無表情だ。
「追いなさいよ」
「ああ?」
「美保を追いなさい!あんたが追うのっ!!そして、ちゃんと答えてあげて!!あんなの…ないわっ!!」
たたみかけるように亜矢の感情が一気に溢れ、涙目になる。
「もう答えたぜ?あいつには興味ねえ」
「そうじゃない、ちゃんと返してあげて………美保の気持ちに。結果が全てじゃないのよ。死神には分からないだろうけど…」
グリアは叩かれた方の頬にそっと触れ、小さく舌打ちをした。
昨日のグリアの発言も気になるが、まずは美保の事である。
正直、相手が死神という事で素直に応援する気になれない。
むしろ、死神に近付く事によって美保が不幸な目に合ってしまうのではないかと、亜矢はそれが心配だ。
(無駄かもしれないけど……美保を説得してみよう)
昼休みになり、亜矢は美保を説得するべく彼女の元へ向かった。
だが、教室内に美保の姿が見当たらない。
亜矢はノートを取るのが遅れてチャイムが鳴って少ししてから席を立った。
どうやら美保は、先に教室を出てしまったようだ。
よく見れば、昼時になるといつも亜矢にたかり、パシリさせる死神の姿もない。
亜矢は何か胸騒ぎを感じ、急いで教室を出た。
校内のあちこちを探して回り、ついには校舎の外にまで出た。
予想通りだった。
校舎の裏、人気のない中庭に、美保とグリアの姿があった。
二人の姿を発見した亜矢は、とっさに物陰に隠れて二人の様子を見る。
「悪ぃが、オレ様はあんたに興味はねえよ」
どうやら、すでに美保がグリアに告白してしまった後の会話のようだ。
それにしても、あんな言い方はないだろう、と亜矢は物陰で一人腹を立てた。
「そんな……グリアくん、好きな人とかいるの?」
美保がそう聞いた瞬間、グリアの視線がふっと亜矢の方に向けられた。
すでに気付かれている。亜矢はその場所から鋭い視線をグリアに返した。
美保に対しては背中、後ろの方の位置にいる為、美保には気付かれてない。
「興味のあるヤツはいるな」
そう言うなり、グリアは歩きだし、美保の横を通りすぎて亜矢の方へと進んだ。
美保は呆然とグリアを目で追う。
だんだんと近付いてくるグリアに対し、隠れていた亜矢は今さら逃げ出す事も出来ず、思考だけが駆け巡る。
(な、何!?どういうつもりなの!?)
目の前でグリアが立ち止まったと思った瞬間。
グイッ!!
「きゃっ!?」
いきなり強い力で腕を掴まれ、引っ張られ、亜矢は思わず声を上げた。
二人の目の前に引きずり出された状態の亜矢。
「あ、亜矢!?」
美保も目を丸くしている。
未だ、亜矢の腕を強く掴んだままのグリアを、亜矢は睨み付けた。
「ちょっとあんた、どういうつもり……」
そこまで言って、次の言葉は塞がれた。
掴まれた腕に体ごと引き寄せられたと思ったら………
一瞬にして口を、塞がれた。
いつもなら『口移し』と称するその行為で。
その場の時が止まったかと思った。
「やっ……!」
亜矢は腕を突っ張り、グリアを引き離した。
だが、亜矢がまず目を向けたのはグリアでなく、美保の方。
美保は放心したかのように、こちらを見つめている。
「……何で?亜矢は、グリアくんとは何でもないんじゃなかったの…?」
力なく、そう呟く。
「美保……ち、違う……本当に違……」
だが、どう否定すればいいのか分からない。
誤解を招くようなグリアの行為も、グリアと自分の関係も。
何も言えない、説明できない。そんな自分がもどかしくて。
何も発する事が出来ない亜矢の口はただ、小さく開いたまま。
「と、いうワケでな。あんたに構うヒマはねえのよ」
そんな中で、グリアが一人、いつもの口調で言う。
「もう、訳分かんないよっ!!」
美保は叫ぶと、二人に背を向けて走り出した。
「美保ッ!!」
亜矢も叫ぶが、美保はそのまま校門を抜け、外へと飛び出して行ってしまった。
亜矢は自分も走り出そうとしたが、ハっと足を止めてグリアの方を向いた。
「………どうしてあんな事したのよ」
亜矢は表情が見えないくらい顔を伏せ、その声は重く低い。
「ああ?今日の『口移し』がまだだっただろ?」
グリアは、いつもと全く変わらない調子で言う。
「そんなの、この場でしなくてもいいじゃない」
「知るか。オレ様の気分だ」
パシッ!!
グリアの顔が少し、横へ弾かれた。
亜矢の右手が、グリアの頬に当たり、小さく響いた。
グリアはすぐに亜矢の方に向き直ったが、無表情だ。
「追いなさいよ」
「ああ?」
「美保を追いなさい!あんたが追うのっ!!そして、ちゃんと答えてあげて!!あんなの…ないわっ!!」
たたみかけるように亜矢の感情が一気に溢れ、涙目になる。
「もう答えたぜ?あいつには興味ねえ」
「そうじゃない、ちゃんと返してあげて………美保の気持ちに。結果が全てじゃないのよ。死神には分からないだろうけど…」
グリアは叩かれた方の頬にそっと触れ、小さく舌打ちをした。