そして、下校の時間。
帰り道が一緒なのだから、不本意ながらいつも隣にグリアが歩いているのだが、今日はどうした事かグリアの姿がない。
何か今日のグリアはいつもと違うなぁ、と亜矢は少し不思議に思ったその時、前方に、制服姿に銀の髪。見慣れた後ろ姿があった。
(なあんだ、あいつ、先に歩いていたのね)
別に無視して歩き続けてもいいのだが、今日のらしくない彼の行動が気になり、小走りに前を歩く背中を追った。
「死神、今日はどうしたのよ一体……」
亜矢はそう言いながら彼の横に並び、顔を覗き込むと……
こちらに顔を向けたのは、グリアとは違う、穏やかな眼をした少年。
ちょっと驚いた様子で眼を丸くしていたが、すぐにクスっと笑いかけてきた。
「ボクは死神じゃないよ?」
亜矢はあっ!と思って足を止めた。
同時に、グリアに似たその少年も立ち止まる。
「ご、ごめんなさい、人違いだわ」
それにしても、この水色の髪、透き通るような青い瞳、白い肌。
グリア以外にも、こんな不思議な外見を持ち合わせる人がいたとは。
後ろ姿だけを見れば、グリアと見間違うのは無理もない。
しかも彼は、亜矢と同じ高校の制服を着ているのだ。
「君、亜矢ちゃんだよね?」
その突然の言葉に、亜矢は驚きと共に我にかえった。
「えっ?どうして、あたしの名前……」
「ボクは近々、君と同じ高校に通う事になるから、よろしくね」
「え、ええ……」
亜矢は力の抜けた声で返したが、彼の馴れ馴れしいとも言える口調も不思議と気にならない。
「じゃあ、また」
そう言うと、少年はゆっくりと歩き出し、道を曲がって行った。
亜矢はその場で立ち止まったまま、彼の通った道を見つめていた。
(転校生って事かしら?)
それにしても、すでに制服を着て歩いていたのはどういう訳か。
ふと、少年の立っていた足元に白い羽根が一枚落ちている事に気が付いた。
だが、それは空気に溶け込むように、ゆっくりと消えていった。
マンションに辿り着くと、亜矢の部屋のドアの前にグリアが立っていた。
「人ん家の前で待ち伏せ?」
グリアの目の前に立ち、少し見上げて堂々たる態度で亜矢は言う。
「誰かに会ったか?」
「え?」
「帰り道、誰かに会ったかって聞いてんだよ」
突然何を言い出すのか、と亜矢は思ったが、ふとさっきの少年を思い出した。
「あなたによく似た人に会ったわ。あ、似てるとは言っても、あっちの彼は穏やかな雰囲気で、笑顔が優しい人だったけど」
こんな時でもちょっぴり皮肉を込めて亜矢は言うのだが、今のグリアは問題にはしていなかった。
「やっぱりな……」
「え、何深刻な顔してるの?」
亜矢の疑問をよそに、グリアは何か考え込んでいるようだった。
「こんなに早く見付かっちまうとはな」
亜矢には理解不能な言葉を漏らしつつ、次の瞬間、グリアは顔を上げた。
その顔には——いつもの、邪悪とも言える不敵な笑いを浮かべて。
「クク…、面白えじゃねえか」
もはや、これはグリアの独り言である。
亜矢は何となく嫌な予感がした。
自分の知らない何かがまた、動き始めている。
これからまた、想像もつかない何かが起きる、と。
帰り道が一緒なのだから、不本意ながらいつも隣にグリアが歩いているのだが、今日はどうした事かグリアの姿がない。
何か今日のグリアはいつもと違うなぁ、と亜矢は少し不思議に思ったその時、前方に、制服姿に銀の髪。見慣れた後ろ姿があった。
(なあんだ、あいつ、先に歩いていたのね)
別に無視して歩き続けてもいいのだが、今日のらしくない彼の行動が気になり、小走りに前を歩く背中を追った。
「死神、今日はどうしたのよ一体……」
亜矢はそう言いながら彼の横に並び、顔を覗き込むと……
こちらに顔を向けたのは、グリアとは違う、穏やかな眼をした少年。
ちょっと驚いた様子で眼を丸くしていたが、すぐにクスっと笑いかけてきた。
「ボクは死神じゃないよ?」
亜矢はあっ!と思って足を止めた。
同時に、グリアに似たその少年も立ち止まる。
「ご、ごめんなさい、人違いだわ」
それにしても、この水色の髪、透き通るような青い瞳、白い肌。
グリア以外にも、こんな不思議な外見を持ち合わせる人がいたとは。
後ろ姿だけを見れば、グリアと見間違うのは無理もない。
しかも彼は、亜矢と同じ高校の制服を着ているのだ。
「君、亜矢ちゃんだよね?」
その突然の言葉に、亜矢は驚きと共に我にかえった。
「えっ?どうして、あたしの名前……」
「ボクは近々、君と同じ高校に通う事になるから、よろしくね」
「え、ええ……」
亜矢は力の抜けた声で返したが、彼の馴れ馴れしいとも言える口調も不思議と気にならない。
「じゃあ、また」
そう言うと、少年はゆっくりと歩き出し、道を曲がって行った。
亜矢はその場で立ち止まったまま、彼の通った道を見つめていた。
(転校生って事かしら?)
それにしても、すでに制服を着て歩いていたのはどういう訳か。
ふと、少年の立っていた足元に白い羽根が一枚落ちている事に気が付いた。
だが、それは空気に溶け込むように、ゆっくりと消えていった。
マンションに辿り着くと、亜矢の部屋のドアの前にグリアが立っていた。
「人ん家の前で待ち伏せ?」
グリアの目の前に立ち、少し見上げて堂々たる態度で亜矢は言う。
「誰かに会ったか?」
「え?」
「帰り道、誰かに会ったかって聞いてんだよ」
突然何を言い出すのか、と亜矢は思ったが、ふとさっきの少年を思い出した。
「あなたによく似た人に会ったわ。あ、似てるとは言っても、あっちの彼は穏やかな雰囲気で、笑顔が優しい人だったけど」
こんな時でもちょっぴり皮肉を込めて亜矢は言うのだが、今のグリアは問題にはしていなかった。
「やっぱりな……」
「え、何深刻な顔してるの?」
亜矢の疑問をよそに、グリアは何か考え込んでいるようだった。
「こんなに早く見付かっちまうとはな」
亜矢には理解不能な言葉を漏らしつつ、次の瞬間、グリアは顔を上げた。
その顔には——いつもの、邪悪とも言える不敵な笑いを浮かべて。
「クク…、面白えじゃねえか」
もはや、これはグリアの独り言である。
亜矢は何となく嫌な予感がした。
自分の知らない何かがまた、動き始めている。
これからまた、想像もつかない何かが起きる、と。