「ねえ、美保の事って、どう思う?」
「ああ?」

昼休み、亜矢はグリアに単刀直入に聞いてみた。
わざわざ人気のない所を選んで、亜矢とグリアは並んで座り、昼食。
相変わらず、亜矢にパシリさせて買わせたおにぎりを頬張りながら、グリアは気の抜けた返事を返した。

「ホラ、いつもあたしと一緒にいる、髪の長い……」
「ああ、あいつな。そいつがどうした?」

こんな事を聞いて、余計なおせっかいだって解ってる。でも—。

「いえ、どうしたっていうか……」

亜矢はそこで言葉を詰まらせた。
だが、グリアはそんな亜矢の心を読んだのか、僅かに目元が笑っている。

「あいつもなかなか美味そうな女だと思うぜ?」
「な、なに言ってっ…!!」
「だから、魂の話だって。なーに前と同じ反応してんだかなぁ、ハハハ!!」
「〜〜〜〜もういいわっ!!」

くだらない事で振り回され、本気で怒る気も失せた。
亜矢はフイっとそっぽを向いた。
そのまま、二人は沈黙。
いや、おかしい。
こんなに不自然な沈黙が続くなんて。
グリアは、いつも隙さえあれば亜矢をからかうような言動を起こすのに。
亜矢はふと、視線をグリアの方に向けた。
おにぎりを食べ終えたグリアは座ったまま顔を少しだけ伏せ、鋭い視線だけは上に向け、どこか虚空を見つめていた。

「どうしたのよ、あんたらしくない」
「嫌な感じがすんだよ」
「え?」
「どうやら、面倒な奴が来ちまったかもな」

グリアの言葉の意味が解らず、でもどこか真剣な顔のグリアに、亜矢も何故か緊張した。

「あんた以上に嫌な感じがする人なんていないと思うけど?」

いつものお返しとばかりに亜矢は皮肉を込めて言ったが、グリアの表情は変わらず。

「てめえ、今日の口移しはタダじゃ済まさねえぞ?」
「ちょっ!変な事したら噛むからね!?」
「へえ、オレ様に勝てると思ってんのか?」

口調だけはいつものグリアだった。