クラスメイトに新しく死神が加わってから、数日。
それは教室での、亜矢の親友・美保との会話から始まった。

「ねえ、亜矢ってグリアくんの事が好きなの?」

その言葉に、亜矢は思わずブっと吹き出しそうになった。
いや、別に何かを飲んでいる最中ではないのだが。

「ち、違うわよ!何言い出すのよ美保!?」

亜矢の反応の大きさに対し、美保はキョトンとしている。

「だって、いつも一緒にいるじゃない?今日も朝、一緒に登校してたみたいだし…」

(一緒にいるんじゃないの、あいつが付きまとってるだけ!)

と心の中で本音を叫ぶが、これ以上、事情をややこしくしたくないと思った。

「ホ、ホラ、あいつはあたしの隣の部屋に住んでいるじゃない?だから、行きも帰りもたまたま一緒になる事が多いだけよ!」

焦って早口になりつつ、それらしい理由でごまかした。
だが、美保はそれを聞いて満面の笑みを浮かべたのだ。

「そっか、じゃあ安心!」

えっ、と亜矢は美保の顔を見返した。

「安心って何よ美保?」
「うん、決めた!美保、グリアくんに告白するわ!!」
「……………」

亜矢は目を見開いたまま固まっている。
言葉が出ないというか、驚きの次に感じたのは大きな不安。

「美保………あいつは、やめといた方がいいわ…」
「え〜何で?あんなにカッコいい人、今までに会った事がないもん!」

確かに、グリアは一見すると普通にカッコイイだろう。
だが、亜矢が知る彼の正体、内面は鬼や悪魔に近い。
そもそも彼は人間ではないのだ。
色々考えても、彼に近付いても何事も良い方向に向かう訳がない。
第一、自分がそうなのだ。

(はぁ……でも、本気なのよね、美保は。どうしよう…)

親友の事を応援したいのは確かだが、これ以上死神に関わらせたくない。
説得した所で、美保がグリアの事を諦める性格でない事も知っている。
複雑な気持ちを胸に、気合いいっぱいの美保に向かって亜矢は作り笑いをした。