「俺、バスケ部入ることにした」

「え!?」

麗の手に握られていたのはバスケ部の入部届の用紙だった。

「実は高校を入学したときに入部届の紙はもらってたんだ。
出す日なんてないって思ってたけど持っていてよかった。」

「そうだったんだね」

まだ白紙だったが、きっとこれからそこに自分の名前を書くのだろう。
入部届の用紙を見つめている麗の顔はとても嬉しそうだった。

「今日バスケをみんなでやって、めちゃくちゃ楽しくて
試合の感覚だったり、チームで戦う空気感だったり、
全てが懐かしくて、前までは恐怖でしかなかったのに
今日はそれを全然感じなかった。
もっとやりたい、その気持ちしかなかった」

そこまで言うとバスケコートを見つめ、ベンチから立ち上がった。

「この気持ちを思い出させてくれた最初のきっかけはやっぱり弥兎と燈真なんだよな。
その次に圭、愁斗、南於、徹」

「うん」

「みんながいなかったら今の俺はいなかったと思う。
友達の存在さえ恐怖でしかなかったのに不思議だよ、ほんとに」

「んー、こんなことを言ったら印象が悪くなっちゃうかもしれないけど、
きっと麗の外面ばっかり気にして内面を見てなかったんだと思うと中学の頃のお友達が可哀相に思えてくる」

私の言葉に麗は「え?」と首を傾げた。