「弥兎?行かなくていいの?」

私たちの様子を見ていた咲羅に肘でつつかれるが、
「うん、大丈夫」と返事をし別の出口から体育館を後にした。

教室に戻ると先に戻っていた皇坂くんたちがクラスの皆に囲まれていた。

「人気者だね」

「まあ、あれだけ活躍したらね」

咲羅と話しながら自分の席に座る。
楽しそうにクラスメイトと話している皇坂くんの姿は新鮮だったが、やっぱり嬉しかった。

「ファンクラブ出来ちゃうかな・・・」

「出来るとは思うけど、皇坂くんは弥兎一筋な感じだと思うから大丈夫じゃない?」

私の小さな呟きに咲羅が笑いながら「だーいじょうぶ」と言ってくれる。

「ありがとう」

ぎゅっと抱き着くと「かわいい!」と言いながら咲羅もぎゅっとしてくれた。
ほのかに香るシャンプーの匂いが心地よくて、首元に顔をうずめると
咲羅は「よしよし」と頭を撫でてくれた。

「座れよ~」

教室のドアが開くと同時に先生が入ってきて、
ガヤガヤしていたクラスが静かになった。

「まずはみんなお疲れ様。
暑い中、楽しめたか?最後のバスケ惜しかったな~
ナイスファイトだったぞ」

先生はそう言いながら教室全体を見渡すと「柴田いいぞー」と教室のドアの向こう側に声をかけた。