隣にいる咲羅も「えっ///」と驚きの声を漏らしている。

それもそのはずだった。
私の視線の先にいる皇坂くんはふわっと優しく微笑んでいたから。

「皇坂くんが笑ってる!!」

「え、やばい。格好良すぎる」

近くにいる女子生徒の声がチラホラ聞こえる中、
皇坂くんは私だけをじっと見つめていた。

ドキドキしながら静かに頷くと、
同じように皇坂くんも頷いてくれた。

「ちょっと!弥兎!」

興奮気味に咲羅が話しかけてくるが、
私はそれに答えられないほど胸がドキドキして苦しかった。
格好良すぎるよ・・・。
自分の胸をおさえながら大好きな彼の背中を目で追った。

皇坂くんの笑顔は試合を一時中断させてしまうほどの出来事で
コートにいたメンバーでさえも驚いていた。

「麗・・・」

徹が驚きを隠せないまま皇坂くんに近付く。

「楽しい」

「え?」

「バスケ、すげぇ楽しい」

今までに見たことないくらいワクワクした顔で徹を見た後に、
圭、愁斗、南於を見る。

急な言葉に4人は最初こそ驚いたが、
嬉しそうに顔を見合わせると

「俺たちも楽しいよ」

「こっから流れもってくよー!」

皇坂くんの肩をバシッと次々に叩いていく。

「期待してる」

「好きなだけ暴れろ」

最後の愁斗の言葉に皇坂くんは「あぁ」と返事をすると
天井を見上げ深呼吸をした。

その姿を見た私は皇坂くんが何を思っているのか分かったような気がした。
皆にとっては球技大会かもしれないけど、皇坂くんにとっては大切な試合。
みんなと、バスケと、そして自分自身と向き合う試合。

大きなきっかけになっているのかもしれない。
結果はどうであっても皇坂くんにとって意味のあるものであってほしい。