「まじかよ」

笑いながら徹が皇坂くんの背中をバシッと叩く。
あまりの強さに一瞬、皇坂くんは顔を歪めたがすぐに真顔に戻った。

「もう少し嬉しそうにしろよ」

圭も笑いながら皇坂くんに近付いた。

「最後まで気を抜くなよ」

皇坂くんはそう言うとボールを追いかけた。
徹と圭はお互いに顔を見合わせると微かに笑い合った。

今、ボールを持っているのは愁斗だった。
先輩を上手くかわしながらドリブルをつく。

「愁斗!」

南於が名前を呼ぶと反射的に愁斗は南於を見るが持っていたボールは自分の後ろにいた徹に渡した。
まさかそう来るとは思わなかった先輩たちは一瞬出遅れた。

その隙を狙い、

「俺だって決めるときは決めますよっ」

その場からシュートを放った。
綺麗に弧を描きながら放たれたボールはゴールに入ると思いきや、

ガコンッ

リングにはじかれてしまった。

「あらっ」

徹の間抜けな声と同時に愁斗が零れたボールを拾い、
ゴールに押し込んだ。