「っ・・・咲羅っ!」

迷った末、私の口から出た言葉。
大好きな友人の名前を呼ぶと同時にベンチから立ち上がった。
自分でも驚くくらい声が大きく、振り返った咲羅もビックリしていた。

「あ、のっ、、私!」

「ストップ!」

勢いのまま伝えようとしたら
「だめ!」と言いながら咲羅が駆け寄ってきた。

「え?」

突然のことに戸惑っていると

「大きな声で言ってもいい内容なの!?
近くに人が結構いるから教室行こ!」

私にしか聞こえない声でそう言い、手首を掴まれたと思ったらぐいっと引っ張られた。

「あれだけ言うの渋ってたのに大きな声で言おうとするとか、
もう本当に弥兎ってしっかりしてるのか抜けてるんだか分からない」

ぶつぶつ何かを言っている気もしたけど聞こえない振りをした。

校舎に入り、靴を履き替え、自分たちの教室に戻る。
試合中は基本的にお昼の時間以外は教室に戻ってはいけないから
先生たちにバレたら確実に怒られるけど誰もいないところを選ぶにはここしかなかった。

「急に引っ張ってごめんね」

教室に着くと咲羅が手を離した。

「ううん、大丈夫。むしろありがとう。
私あのままだったら結構ヤバいことをしでかしそうだったかも」

「ほんとだよ、もうビックリした」

笑いながら自分の席に座った咲羅の後を追うように私も席に座った。