「今の言葉で女子生徒を何人か敵にまわした気がする」

咲羅の腕を引っ張りながら3人に背を向け、
コソコソと話す。

「関係を知らない人たちは仕方ないんじゃない?
まぁ大丈夫だよ」

そう笑っている咲羅を横目に私は小さくため息を吐いた。

愁斗と咲羅は幼馴染で幼稚園の頃から一緒らしく、
去年、咲羅と仲良くなった時に愁斗と話すようになった。

その流れでバスケ部男子とも話すようになり、今に至る感じだ。

「それにしてもあの冷徹王子と呼ばれていた皇坂くんが話してるよ」

バレないようにそっと後ろをまた振り返ると3人は何かを話していた。

球技大会の種目を決めてから、皇坂くんは少しずつだけどクラスのみんなと話すようになった。
みんなと言ってもバスケ部男子のみだけど、それでも私は嬉しかった。

「愁斗が言ってたんだけど、皇坂くん話してはくれるけど一度も笑ってくれないんだって。
今日の球技大会で優勝して笑った顔が見れたらいいなってバスケ部男子で話してるらしいよ」

「そう、なんだ・・・」

話しをしている皇坂くんの顔をじっと見つめる。
表情を変えることなく話を聞いているようだったが、
時折、視線が下を向くときがあった。

きっとまだ完全に吹っ切れてはいないのかもしれない。
あの日、燈真の大会があった日に話してくれたことが頭から離れたことはなかった。
少しでもいい、今日の球技大会で何か変化があればいいな。

そう思いながらそっと皇坂くんから目を離すと、
もうすぐ始まるであろうドッジボールの審判でもある先生に視線を向ける。

「頑張ろっか」

「うん」

私の言葉に咲羅は笑顔で答えると一緒にコートに入った。