「・・・」

何も言われなかったけど目を見ただけで分かった。
「ありがとう」の意味を込めて瞬きを5回してみたら
特に表情を変えることなくまた前に向き直り歩いて行ってしまった。

たぶん通じたかな・・・?

一瞬だったけど握られた感触がまだ両手に残っていた。
触れられたところが熱い。
不思議と震えもとまり、今ではドキドキしすぎて胸が苦しかった。

「・・・ふぅ」

ゆっくり呼吸をし、
誰にも聞こえない小さな声で「皇坂くんありがとう」と今度はきちんと言葉にした。


しばらくして開会式が簡易的に行われ、
連絡事項だけを伝えられると解散になった。

「去年も思ったけど絶対に開会式いらないと思うんだよね」

グラウンドに移動しながら咲羅の言葉に耳を傾ける。

「涼しい教室で担任の先生から連絡事項だけ伝えてもらって、はい終わりでいいのに」

「まぁそれは確かに」

「うんうん」と頷きながら下駄箱で運動靴に履き替える。
外は太陽が照っていてとても暑そうだった。

「そういえばドッジボールってサブのグラウンドでやるんだっけ?」

「確かそうだったような。」

メインのグラウンドがサッカーって聞いたから
私たちはサブのグラウンドでやることになっていたはず。