「いや~、ビックリしたなぁ」

同じタイミングで立ち上がった咲羅が鞄を肩にかけながら私の隣にきた。

「皇坂くん?」

「そうそう。まさかやるとは思わなかった」

咲羅と同じことを思っている生徒は少なくなく、皇坂くんをチラチラ見てはコソコソと話していた。

「バスケなんてやったらまたモテちゃうかファンクラブとかできそうじゃない?」

楽しそうに笑いながら咲羅は皇坂くんの席を見ていた。
私も同じように視線を移す。

もう少し表情に変化があるかなとは思ったけど、
いつも通りの冷たい表情で特に変化はなかった。
見られるのもコソコソ話されるのも慣れているんだろう。

私の前以外では決して笑わない皇坂くん。
いまだに冷徹王子と呼ばれ恐れられている。

笑った顔を知られたくない気持ちと
皇坂くんは本当は優しくてとても素敵な人なんだよ、と知ってほしい気持ちが
最近はぐるぐると自分の中に渦巻いていた。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか当の本人は帰るのか鞄に荷物をまとめると席から立ち上がった。
皇坂くんが自分の席から離れたとき、

「・・・皇坂っ!」

遠慮がちに名前を呼ぶ声が私の後ろから聞こえ、
咄嗟に振り返ると男子バスケ部の4人がそこにはいた。