「お姉ちゃん!(こう)くん!」

大きなエナメルバッグを肩に下げ、燈真(とうま)が走ってくる姿が見えた。
皇坂くんと一緒にベンチから立ち上がる。

「ここにいたー!探したよ、もう!」

私たちの目の前まで走ってきた燈真は息を整えながら額にかいた汗を手の甲で拭う。

「ごめんね、連絡すればよかったね」

自分の鞄からハンカチをだし、燈真の汗を拭こうと近付いたら

「あ、ハンカチ汚れちゃうからタオルで拭くよ!ありがとう!」

肩から下げているエナメルバッグからタオルをだし、汗を拭った。

「燈真、今日はお疲れ様。
めちゃくちゃ格好良かったよ!
シュートもたくさん決めてたね」

「格好良かった、ほんとに」

私の言葉に続き、皇坂くんも笑って伝える。

汗を拭く手を止め、嬉しそうに「えへへっ」と笑うと、

「ありがとうございます!
皇くんの言葉を聞いたとき、何かが吹っ切れたような気がしたんです。
あの言葉がなかったらシュートもあそこまで決まらなかったと思います。
本当にありがとうございました!」

皇坂くんの目をしっかり見て頭を下げた。

そんな燈真を優しい目で見つめ、

「燈真」

「はい!」

名前を呼ばれ頭を上げた燈真に

「いっちょまえにスリーポイントも決めやがって!
成長しすぎなんだよっ」

屈託のない笑顔でわしゃわしゃと髪の毛を撫でた。