そう答えながら 中原はカチッと小気味のいい音を立てて、ロウソクに火を灯す。
暗がりに ゆらめく焔に照らされて、中原の顔がぼんやりと薄明るく宙に浮いた。
きっと中原にも、私が同じ風に見えていることだろう。
「はい」
線香花火のパッケージを開けた中原が、その中から一本取って私に寄越す。
お互いに一本ずつ手に持って、その先端を火に近づけた。
火をつけるのが、案外難しい。
他の手持ち花火と違って、線香花火は柔らかくて軽い。
軸がふらふらして安定せず、幼い頃、なかなか火がつかずにぐずったことがあったことを思い出した。
「あ、ついた」
ひと足先に、中原の花火に火が移った。
その後を追うようにして、私の持つそれにも光が灯る。
最初は焦らすようにジジジ……とくすぶっていた光の粒は、やがて爆ぜるように、ぱちぱちと四方八方に火花を散らし始める。
その火花はだんだん激しくなって、「もっと」と欲張りな心が顔を覗かせると、虚しくも穏やかな明かりになり、ついにぽとりと命を落とす。
先に落ちたのは私の火花だった。
「へたくそ」
私のより先に火がついたのに、まだしぶとく火を留めている中原が揶揄うように鼻で笑った。
なんだか悔しくなる。
私だって、なるべく手首を動かさないように気を遣っていたのに。
やがて中原の火花も落ちて、お互いに二本目に手を伸ばした。
ぱちぱち、と控えめな音を聴きながら中原がぽつりと言う。
「やっぱいいよな、線香花火って」
「うん。……綺麗だよね」
ありきたりな感想を口にすれば、中原は少し遠くの方を見つめたような気がした。