だめだ、頭のなかのぼんやりとしたイメージの中では、坊主頭に揃えた野球部の男子は、皆個性をなくして同じ顔に見えてしまう。

唯一、中原のユニフォーム姿だけが妙にくっきりと像を結んだ。



「そしたらさあ、見事に線香花火だけ残った。あいつら派手なのばっか好きだから」



ほんと馬鹿だよな、と笑う中原につられて、私までその様子を想像して吹き出しそうになった。



「俺は線香花火、好きだけど」



同じだ、と思った。
理由を聞かれたら困るけれど、私も線香花火は嫌いではなかった。



「だから誰かと一緒にできたらなって思ってさ」



『そこで、なんで私を選んだの』――――喉元まで出かかった言葉は、すんでのところで呑み込んだ。

今聞いてしまったら、魔法が解けてしまうかもしれない。その真相を明らかにするのは、今日が終わったあとでも遅くはない。


そう、思ってしまったから。




「火はどうするの」



代わりに口をついて出たのは、なんとも色気のない質問だった。



「持ってきた」



中原がジーパンのポケットから、白くてどっしりとしたロウソクとライターを取り出す。



「そのロウソクどうしたの」



中原が自慢気に取り出したそれは、花火用にしては太くしっかりした立派なもので、怪訝に思って尋ねると、呆れるような答えが返ってきた。



「ばーちゃん家の仏壇からパクってきた」

「御先祖さまに呪われても知らないからね」

「ははっ、肝に銘じておく」