「僕の――」

 私、イズミはずうっと、初めて自分の下の名前を呼んでくれた目の前のイケメン王子様に見惚れていた。

「僕の名前は敦智《あつとも》です。海藤敦智《かいどうあつとも》と言います」

 ひゃあっ!
 名前だってイケメンじゃないですか。
 かいどうあつともだって……格好いい。
 あつともって勇ましくて美麗な武将みたいに聴こえる。

「漢字はですね」と言ってから『かいどうあつとも』様は、私の手を恭しい幹事の仕草でしなやかででも男らしい大きさの手に取り、私の手のひらに漢字を書き出した。

 いやいやいや、反則です。
 敦智《あつとも》さま。
 そっ、そんな近くに寄られて。
 手を添えられて、手のひらに字を書かれるなんて今朝の私に想像できたでしょうか?
 心臓が早鐘を打つの。
 顔が火照ってカアッと熱くなる。

 私はただじっと湯気が出そうな熱くなりっぱなしの顔で、イケメン王子様の海藤敦智《かいどうあつとも》さまに魅入っていたのでした。

 二人で映画館のグッズコーナーにいるけど、私には敦智さましか目に入りませんでした。