時が過ぎ、私は二十歳になった。

そしてこの年の七夕もやはり雨だった。それなのに、七夕の夜の習慣にでもなってしまったかのように、私はこの日も高台の公園に来ていた。

ザーザーと降る雨は、まるで厚いベールのように視界を邪魔している。

私は傘をやや後ろに傾けて、真っ暗な夜空を見上げた。

空から落ちて来る雨の粒が少し離れた所にある街灯の光を拾って、まるでそれ自体が星ででもあるかのようにきらきらと光っている。

このままこうやって待っていたところで、きっと雨はやまない。今年も諦めて帰るしかないだろう。ここ数年になって天気予報は本当によく当たるようになった。それを信じるならば、今夜天の川が姿を現すことはないだろう。

それに、あと一時間もすれば彼から電話がかかってくるはず。かけてきてほしい――。

星が見えないことを残念に思う一方で、早く家に帰らなければとどこか浮足立ちながら、公園の出口に向かって踵を返そうとした時だった。

目の前を遮るように降っていた雨の勢いが、徐々に弱まりつつあることに気がついた。

もしかしたら、雨がやむのだろうか?でも、まさかね――。

半信半疑に思いながらも、私は期待に満ちた顔つきで傘の柄を両手で握りしめた。

その場でひたすらじっと雨脚の様子を伺っていたら、雨がやんだ。

のろのろと傘を下ろして、暗い空を見上げた。雲が急ぎ足で上空を流れていく様が見えた。そのまま見守っていると、雲と雲が切れたところから、純粋な闇色の夜空が現われた。ちかっと光が瞬いたような気がして、さらに目を凝らす。そこには、星の光がひしめき合うようにして集まった大河が空を斜めに流れていた。

七夕の夜、数年ぶりに見た天の川だった。

私は夜空を食い入るように仰ぎ見た。閉じた傘を左手で持っていたが、その雫が服を濡らしていることなど気にもならない。