「...鈴森さん、ちょっと良い?」


恥ずかしくて小さくなる私に
声をかけたのは華村さん。


「あ、うん... 。」


まだロビーには全員集まっていないから、
少し話す時間くらいはありそうだ。


華村さんについて行き、
皆から少し離れた壁際まで来た私達。


「あのね、鈴森さんに
 協力してもらいたいんだけど... 。」


やっぱりその話しか無いよね... 。
分かってはいたけど胸が苦しい。


「...うん、もちろんだよ。
 何をすれば...?」


しくしく痛む心には気づかないふり。


はるくんだって、こんなに美人できれいな
華村さんと仲良くなれたら、
嬉しいはずだもんね... 。


「今からの肝試しって、
 同じ班の中で2人と3人に
 別れて、行くでしょ?」


「だから、私と天野くんが2人に
 なれるように、手伝ってほしくて... 。」


2人きり... 。
なんだっけ。吊り橋効果、だっけ。

これに協力すれば、2人の距離は
すごく縮まるんだろうなぁ... 。


「...うん!任せて!協力する!」


痛みが増した心を隠して、
笑顔を作った。


「ありがとうっ!
 鈴森さんってほんっとにいい人だね!」


目を輝かせて嬉しそうにする
華村さんは、恋する女の子って感じで。


なんだか泣きそうになった。