「先輩って、ヨーヨーすくい下手ですよね」



 一つもすくえずひもが切れた先輩を、私は呆れて見つめる。



「……そういう花がうますぎるんだろ……」



 五つもヨーヨーを抱える私を見て、先輩がそう返す。



「一個、あげます。どれがいいですか?」

「んー……じゃあ、これ」



 先輩は花火が描かれた水風船を一つ、私の手から持ち上げる。



「花の浴衣と同じ柄」



 ぽしゃん、と水音をたてながら、先輩が水風船を弾ませた。



「残りの四つどうするの?ぜんぶ花がもって帰る?」

「それはさすがに。とれなかった小さい子にあげようかなって」

「いいじゃん」



 先輩がまた、頭をなでる代わりに私の手をぎゅっと握る。

 ちょうどその時、後ろから声をかかった。



「あれ?火月も花火大会来てたんだ?」

「ん、颯太と竜も来てたんだな。二人?」



 そこにいたのは長浜先輩と八木先輩。



「そう、二人で来てた……けど、途中で後輩に会って今は野球部のやつらとまわってる。火月もいっしょにまわる?」



 長浜先輩はそう誘った直後、ふと私に目を留める。



「……と、ごめんごめん!彼女とデート中だったかー!」



 とたんにニヤニヤし始める二人に、火月先輩が軽く足蹴りを喰らわせる。



「ごめんって!お邪魔虫は行きますよ~だ!」

「あ、待って」



 火月先輩が二人を引き留めたあと、私のほうを向きなおる。



「予定合わなくて部活見に行けずじまいだったし……ちょっと後輩たちの顔見たいんだけどダメかな?」

「!」



 後輩の顔が見たいって……たぶん野球部のメンバーと合流するってことだよね。


 合流して……そのあとどうなるんだろう。

 顔だけ見せて解散するのかな。
 それともそのままずっといっしょにまわるのかな。


 私は……二人きりがいいんだけど……。



「……ちょっとなら……」

「ありがとう、花」



 先輩は……私と二人きりじゃなくても、いいんですか……?