○時間経過。時計がくるくる進む。

 リビングのテーブルに宿題を広げ、イヤホンを付けたまま突っ伏して眠っていた久白。アラームの音で目を覚ます。
 イヤホンをしていたのでびっくりして飛び起きる。眼鏡がずれた。

久白「うひゃあ!…あれ?」

 無意識に動いた手が携帯を探し、アラームを止める。時間は20:50。

久白(あれ?)

 思わず眼鏡を外して目を擦り、もう一度時間を確認。
 間違いなく20:50。
 冷や汗を流しながら窓の外を確認。夏だがさすがに暮れていた。

久白(あれ!?)

 蒼白になって飛び起きる。ソファを確認すると、曲野はまだ寝ていた。

久白(わ、私も寝てたー!!)
久白(うそ、時間やばい!)
久白「お、起きて曲野くーん!」

 必死に揺さぶる。

曲野「う゛う゛ん…」
久白「嘘でしょまだ熟睡…! おおお、起きてー!」
久白「私さすがにもう帰らないとやばい! 起きて鍵閉めて曲野くーん!」
曲野「う…?」
久白「九時から【プランクトン】さんの実況があるのにー! もう間に合わないよー!」

 泣き言を訴えながら曲野を揺する久白。
 しかしその言葉で曲野の目がカッと見開かれ飛び起きた。

久白「うわ!?」
曲野「…今何時!?」
久白「えっ」
久白「は、八時時五十分過ぎ…」
曲野「やっべ!」
久白「え、曲野君!?」

 叫び、リビングから飛び出す曲野。バタバタと遠ざかる足音。

久白「だ…っだから、私帰るから鍵閉めてー!」

 返事はない。

久白(私も急ぎなんだよー!)

 曲野を追いかけて二階に上がる。失礼します…! と思いながら曲野を追いかけた。

久白(大声出すのは近所迷惑になるし、良くないけどお邪魔します…!)
久白(足音からしてこっち…! もう、マイペースすぎるよ曲野君! さすがに怒るよ…!)
久白(ああもう、時間的にリアタイできなさそう…アーカイブ載るよね信じるよ…っ)

 半泣きで、半開きの扉に向かう久白。

久白「曲野君、私帰るから鍵…」
曲野「九時になりました。今日もゲームの時間です」

久白(…ん!?)

 ひょっこり中を覗き、聞こえてきた言葉に目を見開く。
 部屋の中は曲野の私室らしく少し散らかっていた。
 目を引く大きな機材。いかにもゲーム実況者が座っていそうな椅子と大きなデスクトップが三つ。その椅子に座り、マイクを装着した曲野。

曲野「【プランクトン】です。今日もよろしく」

 そう、画面の向こう側に語りかける曲野。
 部屋を覗く姿勢のまま、久白は驚愕で固まった。

久白(…目の前で推しの生配信が始まった件についてェ――――!!)