彼には分かっていた。
 これが彼女との最後になるということを。

 それまで感じた不快な胸の痛みも、彼女と出会ってからは全く感じることがなくなったことにも気付いていた。

『お嬢さまはたくさんの愛を私に教えてくださいました。本当にありがとうございます』

 彼の表情は穏やかだった。
 娘と過ごしていたときに見せたように。


 彼は感謝の言葉を残し、塵となった。


『いつか、いつかまた必ず巡り合って、お嬢さまと……』


ーー終