そんな数ヶ月ほど続いた彼女とアンドロイドの穏やかな生活も、それまでだった。
 静かだった家に、警察がやってくる。

『殺人容疑のアンドロイドがいるな』

 数体の警察アンドロイドが彼を取り囲んだ。

『ご主人に命ぜられて“罰し”た、あの方々のことでしょうか?それとも。もう私には、数多くの罪があるのでしょう』

 彼はそう言うと、躊躇うことなく立ち上がる。

 彼女は、彼が全面的に悪いのではないと泣きながら弁解したが、命令重視のアンドロイドたちが取りあうはずもない。

 彼は穏やかな顔で首を振る。

『お嬢さま、私は自分の犯した罪を受け入れます。“悪いこと”と理解できなかったとはいえ、手にかけたのは私なのです。願わくばあの物語の人形のように私も人間になり、お嬢さまのお側でお嬢さまの幸せを』


 彼は連れて行かれた。

 ようやく彼にも良心が分かってきた矢先の出来事。
 彼女は何も出来ず、力なく座り込んだまま泣き続けた。

 彼はすでにボロボロの身。
 罪を理解し“改めさせる”ための教育や手術をする間もなく、すぐに処分になるだろう。

 最後に自分に向かって語った彼の言葉は、軽口も叩いたことがなかった彼なりの最後の冗談だったのだろうか……