しかし彼に本当のことは言えなかった。
 自分の方が本当のことを口にしただけで、祖母から聞いたあのときの想いが溢れてきそうになるから。

 それでも次に発された彼の抑揚の無い声も、今の彼女には真剣な言葉に聞こえた。

『魔女も人間のもとに向かったのです。人間の旅立った先に、私が行くことは出来ないのでしょうか?』

 ようするに、アンドロイドがもし“死んだ”ら。

 人形は人間では無いのだから天には行けない。
 では恐らくアンドロイドも……

「……私がもし、あなたではその人間の旅立った先には行けないかもしれないと言ったら、あなたは物語の人形のように人間になりたい?」

『お嬢さま、それは私の質問の答えになっていないようです。しかし』

 彼はそこで少々間を空け、さらに続ける。

『それは今まで考えたこともありませんでした。ですがお嬢さま、現実ではアンドロイドは人間にはなれません。“物語”だからなれたのです』

 そんな彼の言葉に、彼女は穏やかに笑った。

「そうすぐに決めつけるものでは、ないと思うわ」