『お嬢さま、また魔女の話を聞かせてくださいませんか?』

 真面目で真っ直ぐな眼差しのまま言う彼の言葉に、彼女が笑う。

「ふふっ、あなたって変わっているわ。アンドロイドなのだから、この物語はすでにあなたの中にインプットされているはずでしょう?」

『お嬢さまの話す魔女の話を、私は聞きたいのです』


「『……魔女が願ったように、人形は“人間”になりました。その“人”は魔女のことを忘れてしまいましたが、いつか『誰か』がしてくれた優しさを忘れずに、生きていこうと心に誓ってて……』」

 そして彼女は真剣な表情から穏やかな表情に変え、いつもの通りに物語終わりに言う。

「おしまい」

 すると彼はすぐに彼女に尋ねた。

『お嬢さまは以前、物語の最後に“魔女は自分の大切な人間に会いに旅立った”のだと教えてくださいました。それは人形のままでは会うのが叶わない場所だとも。では、“私”でもそれは叶わないのでしょうか?』

 彼女は考える。
 彼はまさか、この物語に出てくる魔女に会いたいというのだろうか?