小さな魔女は昔、自分の魔法で誤って愛しい人を殺してしまった。

 調合した薬草も癒しの魔法も間に合わず、優しいその人は死ぬ間際、
「君には優しさを忘れずに生きていてほしい」
と優しい声で魔女に言った。

 魔法を使わずに生きることを選んだ魔女は愛しい人の墓を建て、一人旅に出た。

 あの人のように、優しい『人間』になれますように……

………略


 次に魔女が出会ったのは壊れかけた人形だった。

 酷く扱われボロボロの人形は、魔女を人間達にされた仕返しをするために小屋に閉じ込め、痛めつけた。

 魔女はそれでも魔法を使わずに耐え、人形の苦しみを話を聞いて少しずつ解いてやった。

 人形は魔女に好意を抱くようになったが、遂には壊れてしまった。
 魔女は泣きながら人形に別れを告げた。

………略


 旅を終えた魔女は愛しい人の墓へ行き、
「ごめんなさい、さようなら……」
と言った。

 魔女は、愛しい人への感謝を忘れなかった。
 辛い目にあったときに、自分を支えてくれたその人を思い出したから……


 魔女が選んだのは壊れた人形だった。

 魔女は最後の魔法を使った。
 自分の命に変えて……

「生きるのは悲しいことばかりじゃないの。壊れてしまったあなたに、もう一度生きてみてほしい。優しく生きて、今度こそ、あなたが幸せになれますように……」

 魔女が願ったように、人形は『人間』になった。
 その『人』は魔女のことを忘れてしまっていたが、いつか『誰か』がしてくれた優しさを忘れずに、生きていこうと心から思った。