教室の中、彼女の存在だけが異質に映る。
地味な見た目に、強い感情の感じられない澄ました表情。温度を伴わないその目には、ただ早く時間が過ぎないかななんて願いだけが込められていた。

学校という場所は、想像していたよりも退屈かもしれない。
それが初日だからなのか、始業式を待つ間のちょっとした待ち時間だからなのかは定かでは無いが。

もし、この場所自体が退屈なのなら少し、面倒だ。なんて。

冷めた感情だけが広がる。

安らぎも、楽しさも、心を満たすものがないのなら、どれほど期待をしたところで意味などない気がしてしまう。
珍しく、学校というものに期待をしていたのかもしれない。

随分と久々だったから。
幼い頃の記憶を美化して心躍らせていた可能性もある、とどこか他人事みたいに考えていれば、どうやら教室を移動する時間がやってきたようで、教師の声がかかり、皆席を立ち始めた。

仲の良さそうな人の群れに馴染むことなく、後ろを一人ついて行く。

この学校は、体育館に移動するだけでもなんだか少し疲れるかもしれない。広い敷地に目を向けつつ、置いていかれないよう、迷わないよう歩きながらそんなことを考えた。