「高嶺海です。関西から引っ越してきました。よろしくお願いします」

 教師から自己紹介を促され彼女は口を開く。
 落ち着いた声音で柔らかい音色ながら、淡々とした調子で紡がれた言葉は酷く素っ気ない。

 よろしくお願いします、などと言っておきながらその気があるのか疑問が浮かぶほどだ。
 この学校では見慣れないタイプの人間に対し、どう接すればいいか分からない困惑の空気は彼女に対して居心地の悪さを生み出しているものの、席につき教師の話を聞く段階へと移ればそれらは多少緩和された。

 教師の話を聞かず雑談に興じている生徒も多数いるため真面目な生徒、という訳では無いのだろうが、大声で喚いていると言うよりは小声でコソコソと喋っているあたり、最悪なほど不真面目であるとも言い難い。

 どうやら教師の言葉を聞くに、あと少し経てば始業式のため体育館への移動となるらしい。
 その後、HRを挟んで通常通り授業を行うらしい。
 と言っても初めのうちはオリエンテーションのような軽いものとの事だが、さすがに生徒が派手だろうが元々の校風だろうか、始業式初日から勉強が始まるらしい。

 一応、話から察するの十四時半には終わる短縮されたスケジュールにはなっているのだろうが。