ザワつく教室。
 一度も染めたことがないであろう、傷みを知らない濡れ羽色のミディアムロングの髪を緩く三つ編みにして、派手さのないメイクもカラコンもしてないその顔には眼鏡という用意周到さ。

 それはもう、動揺が広がるのも当然だろう。

 高嶺海の容姿は、鮮やかな彩りで満ちたこの学校という名のキャンバスには不釣り合いな暗さと言えた。
 職員室の教師ですらその姿を見て驚いていたのだ、教室なんて、まだ若く元気な少年少女が詰め込まれた場所が騒がしくなるのも道理だ。

 緩い校風に、整った設備……様々な理由から、勉強はできるが賑やかで派手好きなそんな学生ばかりの学び舎に現れた異分子。
 既にダサいや地味といった言葉がよく上がっている。

 褒められることでは全然ないものの、高嶺海としての感想と言えば「あぁ、なんと元気なことでしょう」なのだから呑気なものだ。

 豪胆と言えるのかもしれない。
 彼女はそういう種類の生き物で、そういう種類の性格で、登校初日の出だしで悪感情を抱かれようとも気にするほどの繊細な心は持ち合わせてはいなかった。