「誰が謝るかよ。実際本当のこと言ってんのか確認も取れてねぇのに、嘘かも知んねぇじゃねぇか」

 盛大な舌打ちと共にそんな言葉を置いて、赤髪の男は不機嫌ですという主張を全面に出したまま屋上から出ていく。
 ただでさえ後ろ向きだった学校生活が完全に雲行きが怪しくなった瞬間である。

「……私から、謝罪するわ。本当にあのガキは……」

 頭を押えて怒りを露わにする彼女に、首を横に振って大丈夫だと示す。

「いえ、あの。あまりちゃんと状況を理解している訳ではないですが、あの方の言い分も何となく分かるので」

 そういうルールが存在する中で破ったのは自分自身だ。流石にあそこまで不機嫌になられる心当たりはなかったが、それでも海が言っていた言葉に嘘は無いなんて言う証拠も存在しない。
 だからこうも深刻そうに謝罪されるとかえって困ってしまう。

「こういう落ち着きを、瞬にも見習って欲しいものだよね」
「無理よ、祥希(よしき)。だって三年は言ってるけどどうにもなってないわ、あれ」