「何、何してんのよ」

 彼らの後ろから、ハキハキと、真っ直ぐとした印象を与える声が聞こえた。

「先客がいて立ち止まってたんだよ、ほら」

 ジッと見つめる視線以外は、比較的物腰柔らかで温和な印象を与える男が、そう言って声の主に海の姿が見えるように少し場所を空ける。
 意志の強そうな美人と目が合った。
 バイオレットブラウンの、腰まで伸びた緩いウェーブのかかった髪。
 それが屋上の風を受けて、ふわりと流れるように揺れる。

 少し、瞬きをした後目の前の美人なその人は、赤髪の脳天目掛けて手を振り下ろした。
 あれは所謂チョップだろう。躊躇なく、加減もなく。

「あんたのクラス、転校生いたでしょうが」
「は? それがなんだよ」
「あんたなんでここ通っててそんな馬鹿なのよ本当に」

 あんたのクラス、という事はつまりこの赤髪の彼はクラスメイトなのだろうか、初めて見る顔だが。なんて思っていれば、そういえば一つだけ空席があったことを思い出す。
 学校には、来ていたのか。その上で居なかったということは、本日はサボりということだろうか。