「ここは俺らのテリトリーだっつーのに、お前は何してんだ」

　圧のある、嫌悪感の混じった声。刺すように睨みつける視線と相対し、言葉に詰まる。
　怯えた訳では無い。ただ、そう、息がしづらい。

「一応、この学校のルールとして、この場所は俺ら以外立ち入り禁止のはずなんだけど……」

　口元に手を当て、状況を分析するかのようにジッと見つめてくる視線。ただひたすらに、居心地の悪さが増していく。

「すみません、そんなルールがあるとは露知らず」

　口から出た言葉は、淡々と、あまり感情の籠らないものだった。
　知るわけが無い、書いてもいない、聞いてもいない。

　どこか分かりやすい場所に書いておいて欲しかった、事前に教えてくれれば最初から来ようなんて考えないものを。

　海が内心どう考えていようと、目の前にいる面々の態度は変わることがない。
　特に赤髪の彼は「んな、阿呆みたいな言い訳を聞けってか？」なんて、さらに機嫌の悪さがました気がする。

　どうするのが正解なのだろうか。