くるりと鏡の前で、最終チェックを行う。

 結局あのあと、ふたりで咲河先生に婚約届を出しに行ったんだ。

 星宮くんが選んだって話したら、あらま……って、あっけらかんに口を開きっぱなしだったの。

 そりゃあびっくりするよね。だって、あのかたぶ……じゃなかった、王子様が選んだ女の子が、こんなド平凡、ド庶民だったんだもん。

 女子の反感を買っちゃうし、私にとっては不都合しかないんだけど、恋愛学で成績が落ちると校長先生に退学にされちゃうかもしれないから、まあ好都合?

 ちなみに、私達は契約上で婚約パートナーになるので、ルールを決めた。

・お互い好きにならない

 ふむふむ、まずはこれがないと契約が成り立たないよね。

・模擬デートでは、一定の距離を保つ。

 うんうん、それも必要。星宮くん、女子苦手っぽいし。

・ただし、成績を上げるための「可愛い」などの発言はよしとする。

 成績を上げるため……うーん、まあ仕方ないか。成績が落ちるのは嫌だから。

・ベストパートナーになり、模擬結婚式で最終フィナーレで契約は解消する。

 ベストパートナーに選ばれると、毎年の末に行われる模擬結婚式の最終フィナーレを任されるの。

 だからそこで、私達はパートナーをやめます! って宣言するんだって。

 うんっ、完璧だと思う!

 それに、今日は模擬デート当日。

 めいっぱいおしゃれして、デートに挑むんだ!

 これでも人生初のデートだもん。可愛くして行かなくちゃ。

 それに相手はあのか……王子様の星宮くん! 隣に歩いててもふさわしくないと、本当に女子から嫌われちゃう。

 今だってふさわしくないわとか似合わないよねとかすごく言われてるんだから、これ以上発展したら恐ろしいっ。

 私は婚約チェッカーを右腕にはめて、そして左手の薬指にソッと婚約リングをはめた。

「よーし、準備万端! 行っくぞー!」

 そして、波乱の模擬デートが、幕を開けた。

 待ち合わせ場所の噴水に着くと、星宮くんはすでに待っていて、周りからはほわぁ、とかふわぁ、とかの憧れの熱い声が聞こえてくる。

 珍しい私服だし、かっこいいしモテるなぁ、星宮くん。

 はっ、話しかけづらいなぁ……周りの女の子達のせいで、星宮くんの鬱陶しそうな顔しか見えないや。

 ピョコッ、ピョコッと飛び跳ねていると、星宮くんとパチッと目が合ったの。

 わわっ!? って、きてくれてる……?

 め、迷惑かけちゃったかな? 私から行けばよかった……。

「おはよ、月姫」

「おはようございます、星宮くん」