ふわぁ……よく寝たなぁ……。

 ここのベッド、ふかふかすぎていつまでも寝ていられちゃうよっ。

 本当に私なんかが、こんな豪華な部屋を使っていいのか、心配になってきちゃうもん……。

 ちなみに私は、学食が無料になったけど、お昼ご飯は手作りのお弁当を食べることにしてるの。

 だって料理は、得意なことがない私の、たった唯一の得意分野だから!

 家庭科なんて、調理実習が一番楽しみだったんだよ。

 しょ、小学生の頃は、月の姫なのにおかしくない!? って、みんなにびっくりされてた。

 別に、月の姫なんかじゃないのになぁ……。

 ほんと、名前だけで私を決めつけてもらっちゃ困るよ。

 あははーっと乾いた笑みを浮かべながら、大好きな卵焼きを入れて、お弁当は完成!

 うちの卵焼きは、甘い派なんだ。

 たぶんだけど、私の想像する理想の恋人同士だったら、

『卵焼き、○ちゃんの作るのは甘いのなんだね』

『そうなの! でも、×くんのはしょっぱいのなんだね、びっくりしちゃった』

『あはは、今度作り合う?』

『いいね、○ちゃん、料理得意なんでしょ?』

 なんてことを言い合ったりしてるんだろうな。

 私もしてみたいなぁ、なんて、私なんかと付き合ってって言ってくれる人なんて、早々現れないよね……。

 私、これほどまでに!? ってほど、じぶんに自信がないの。

 料理だってほんとに得意って言えるのかわからないし、じぶんの容姿にも自信が全然なくて。

 だから、友達の英梨々(えりり)に謙遜するな! って今で言う美少女侍に叩かれちゃったこともあった。

 あっ、あのときは本当に骨折れちゃうかと思ったんだよ……っ!

 そういえば、英梨々も星ノ宮に受験したらしいけど、会えたらいいなぁ。

 昨日はドタバタすぎて、クラスに誰がいたか、覚えてないんだ。

「さて、行こうっ!」

 今度こそは遅刻しないぞ!

 私は朝の日が木で遮られていて、日陰と日向のバランスがいい感じ。

 ふふっ、気持ちいいなぁ〜。

「え、かっ、輝夜!?」

「わぁっ、英梨々! 久しぶり! やっぱり英梨々、ここ受験して受かったんだ! よかったぁ〜! 友達いないかもって思ってたのっ。英梨々がいてくれてよかったよ〜!」

「あたしもだよっ! 私って、ちょっと口調とか言葉がきついでしょう? 友達できないな、って絶望してたところなんだよね! 輝夜がいてよかった!」

「英梨々〜!」

「輝夜〜!」

 なんと、ポッカーンと口を開けていた英梨々と、感動の再開を交わしたの!

 英梨々はマッシュルームヘアのオレンジ色の髪と、赤い少しつり上がったオレンジ色の目を、変わらず人懐っこそうに向けてくる。

 ふふっ、英梨々、全然変わってないなぁ〜。なんだか嬉しいや。