「さ、咲、河先生……」

 ジャストタイミングにきてくれた咲河先生に、安心して涙が出てきちゃう。

「え!? つ、月姫さん!? なんで泣いて……斎藤さん達、きなさい! デート妨害とみなして、校長先生と話し合うから!」

「咲河先生、別に私達、悪いこと……!」

「ううん、まずここにいるのがおかしいの! ふたりとも、これはほぼほぼストーカーよ!? 悪いことしてないわけないじゃない! いいからきなさい!」

「咲河先生ぃ……」

 ふたりはもう一度私達を睨んでから、渋々着いて行った。

 怖、かったっ……。

「雅くん……怖かった……」

「輝夜……!」

 雅くんのもとへ走っていくと、雅くんは優しく優しく抱きしめてくれた。

 安心で、また止めどなくブワッと涙が出てくる。

「杏梨ちゃんと里咲くん、本当に粘着質なんだね……」

「ああ、そうだな」

「雅くん、杏梨ちゃんのほうが良いなんて言わない、よね……? っていうか、言わないでっ……」

「っー、可愛すぎだろ。反則」

 可愛いって……!

 雅くんの可愛いの基準、すごいおかしいんじゃないかな?

 私に可愛さなんて、欠片もないもん。

「じゃあ、デート、続けよっか?」

「ん」

 短く返事して、私の手をギュッと握ってくれた。

 って、そういえば、あの何個かのルール、破り過ぎのような!?

 嫌ではないけど、女子嫌いじゃなかったの?

 なんだか特別と言われているような気がして、暖かい気持ちがポワポワ胸の中に秘められていたんだ。

「きゃああぁーっ!」

 そして、数分経って。

 私達は前の遊園地にある、お化け屋敷にきた。

 お化け屋敷には、おばけの仮装をしたスタッフさんのうらめしや〜って声よりも断然大きい私の悲鳴が響き渡っていた。

 じっ、実は私、恐怖症ばっかりなんだよっ……!

 暗所恐怖症で、閉所恐怖症! それに、高所恐怖症!

 今、暗所恐怖症と閉所恐怖症がどっちも到来してて、恐怖満載の空間に見えちゃってる!

「こんなの子供騙しだろ。そんなビビらなくてもいいんじゃねーの?」

「違うのっ。私、恐怖症ばっかりで怖いんだよっ」

「じゃあ、なんでこようなんて提案したんだよ」

「だ、だって……」

 雅くんの怖いっていう姿が見たかったから恐怖症のこと忘れてた、なんて言えないよね。

「とりあえず、さっさと出口探すぞ。掴まってろ」

「う、うん……っ」

 言われなくても! と言わんばかりにぎゅうっと力を込めて雅くんの腕を掴む。