私の目の前にどどーん! と立っている、憧れの私立星ノ宮学園は、ありえないけど私っていうド庶民が通い始める夢のまた夢のまた夢の楽園!

 友達はできるのかな? 勉強にはついていけるかな? とか、不安はいっぱいいっぱいだけど、それ以上に学園生活が楽しみな私。

「きゃあーっ! 星宮くーん!」

「くはっ、星宮くんの顔が見られて、幸せ……」

「ちょ、大丈夫!? ほ、星宮くんっ、恐るべし……っ」

 聴力が悪すぎる私でも聞こえるぐらい、黄色い悲鳴が聞こえてきた。

 誰だろう? 有名人かな? 芸能人? アイドル?

 そう思っちゃうくらいに、わーわー悲鳴がうるさいの。

 っていうか、星宮って、聞いたことあるような……?

「星宮財閥の一人息子で、溺愛されて育てられてきたから、お坊ちゃまだけど気遣いがめっちゃできるらしいよ、星宮くん!」

「本当!? わあ〜っ、あたし、絶対星宮くんと婚約パートナーになりたい! 星宮くんの溺愛を受けてみたいよ〜っ」

「わかる! あたし、そのために星ノ宮にきたようなものだよ! 負けないんだから!」

 星宮財閥の一人息子!?

 それに、婚約パートナーになりたいって……え!?

 もしかして、入学式で言っていた、みんなが狙う王子様のこと!?

 入学式で校長先生が素敵素敵ってベタ惚れしてた、通称王子様のことなんだ……っ!

 校長先生は大好きな生徒よ〜! としか言ってなかったから、わからなかったよ。

 それにしてもすごい人気だなぁ……やっぱりみんな、星宮くんと婚約リングで結ばれて、ラブトレしたいのかな?

 ラブトレ、正式にはラブトレーニング。それは、この学校特例の恋を極める授業こと恋愛学のことなんだ。

 婚約リングで結ばれた相手とデートしたり、嘘だけどでも本格的な結婚式をしたり。

 その、通称模擬結婚式のときに、肌身離さずつけていた婚約リングを交換し合うの。

 とってもロマンチックでしょう? って、校長先生が自慢してたっけ。

 確か王子様の名前は、星宮雅(ほしみや みやび)くん……だったよね。

 女っぽい名前だけど、星宮くんみたいな高貴でクールな性格と容姿に、ジャストしてる名前だな。

 純粋にそう思った。

 そういえば、婚約リングってどんなものなのかな? 私の予想は、金色で、何色かの宝石が埋め込まれてる、お高そうなブランド品のやつ。

 だって、星ノ宮学園って、何もかもが庶民にとってはショックをくらうぐらい値段が高すぎるんだもん!

 体操服が、一着なんと十万円! 入学式のとき筆記用具とか色々と揃えてもらったから買わないつもりだけど、無くしたりなんてしたら終わりなの……。

 だから、大切に大切に、新品のようにピカピカのまま綺麗に使うことを目指してるんだ!