模擬デートから、一ヶ月が経った。

 私が誘拐されていたことを知って、それもあのルカちゃんが命令していたことを知って、みんなはパニックを起こしてた。

 そりゃそうだよね……生徒会長で信頼が厚いルカちゃんが、雅くんのことが好きすぎて誘拐しちゃったんだもん。

 それに、平凡オーラが隠しきれないザ・ド庶民の私が婚約パートナーだって学園中に知れ渡っちゃったし……。

 平穏な学園生活は、夢のまた夢だよ〜。

「英梨々と稔ちゃん、模擬デートで上手くいったんだよね! おめでとうっ」

「ありがとうございます、輝夜さんっ! やっぱり藤井くん、優しくエスコートしてくれました〜」

 思い出しながらうっとりと熱い吐息をこぼしている稔ちゃんに、あははと笑みを浮かべる。

 今は、私の寮部屋で、女子会を開いているところなの。

 女子会といえば恋バナ! ってなって、前の模擬デートの話が持ち上げられたんだ。

 稔ちゃんは藤井くんと本格的に付き合い始めてるし、英梨々も矢田部くんに想いを寄せてるみたい。

「英梨々は? 矢田部くんの話ないの?」

「……っあ、あいつ、めっちゃちょっかいかけてくるし、話とかないし……日久留、仕方ないからとか言って、近づいてはくるけど……でも……」

 ふふっ、英梨々、乙女だなぁ〜。

 初々しい英梨々を見て、私はニヤニヤ笑っていた。

 日久留っていうのは矢田部くんの下の名前なんだけど、最近模擬デート以降もスポーツ万能な英梨々を誘って、サッカーとか一緒にやってるらしいんだよ。

 ちょっかいもかけてくるって言ってるし、もしや両想いかも!

 だって、意地悪は少年の愛とも言うでしょう?

「あ、あたし達のことより、輝夜はないの?」

「星宮くんの話、聞きたいです!」

 キラキラに目を光らせて、……いや、ギンギラ? 猛獣のように私をとらえるふたりに押されて、色々と話してしまう。

 手を繋いだり、寮に行き合ったり。

 手料理をご馳走したり、また模擬デートをしたり。

「へぇ〜。発展してるじゃん!」

「輝夜さんは、星宮くんのことが好きなんですよね?」

「え……す、好きじゃないよ?」

 ほんとは、すっごい気になってて、早く会いたいなぁ〜なんて思ってるんだけど。

 好きになっちゃいけない相手だし、好きかもとも気が付かないようにしてるんだ。

「「嘘!」」

 すると、ふたり揃ってズゴゴッと効果音が付きそうなほどスベって。

「えっ。ど、どうしたの? ふたりとも……?」

「いやいやいやっ、こんな一緒にいて安心するだなんて言っておいて、好きじゃないとか!」

「ありえないですよ!?」