そして、私達は海色カフェアリーを出た。

 おいしかったなぁ、ストロベリープリンセス〜。

 うっとり、思い出しよだれを垂らしそうになる。

「ごめん輝夜、ちょっと手洗い行ってくる」

「いってらっしゃ〜い」

 私はブンブン、遠のく背中に手を振っていた。

 いやぁ、ほんと夢みたいだよ。

 あの王子様が私なんかとデートしてくれてるんだもん。

 夢としか言いようがなくない?

「わわっ」

「……っと。だ、大丈夫? 怪我はない?」

「だ、大丈夫です……私、ルカって言います。輝夜さん、ですよね? お詫びもしたいので、ちょっときてくれませんか?」

「え? で、でも、私、今学校で模擬デートしてるの。だから、行くことは……ル、ルカちゃん!? ちょ……っ」

 ルカちゃんは、わざとらしく私にぶつかってきて、それで、どこかに連れて行こうとしてる。

 み、雅くん……っ。

 そう叫ぼうとしたのに。

 ルカちゃんは私の口をハンカチで塞いでて、私は……。

 スッと、気絶しちゃったんだ。

 それから、どのくらい経ったかな。結構経ったころ。

 頭が鈍器に殴られたみたいな激痛が走った。

 痛……。ここ、どこ……?

 ここは、見たこともない広いボロボロな場所。

 私はそこの壁にもたれかかっていたの。

「ルカ、ちゃん……?」

「あ、気づきました? みなさーん、時間ですよー?」

「いやぁ……な、なにするのっ……」

 私はカチャ、カチャ、と婚約チェッカーと婚約リングを強引に奪われた。

 婚約チェッカーは、雅くんとの最終連絡手段だった。

 でも、それを奪われちゃった今、外部への連絡は絶えちゃった。

 ど、どうしよう〜。ルカちゃん、なんか怖い人っぽい……っ。

 サラサラでロングストレートヘアの淡いスカイブルーの髪。深い紺色の瞳は、おっとりしているルカの性格を表していて、吸い込まれそうな星空みたい。

 も、もしかして、誘拐!? もしくは拉致?

 どっちも怖いよ〜……雅くん、助けて〜。

「ど、どうしてルカちゃん……なんで私のこと、ゆっ、誘拐なんて……」

「だってお前、星宮くんに手ぇ出してんじゃん」

「え……」

 ルカちゃんのおしとやかだった雰囲気はどこかに行って、今は殺気のこもったオーラがボワボワ出されてる。

 私の体はヒクッと反応していて、恐怖を覚えていたの。

「べ、つに、雅くんとは、婚約パートナーなだけで……手とか、出してるんじゃないし……」

 ビクビク体をふるわせて、ルカちゃんに訴えかける。

 周りからはワーワー男女が集まってきて、私は泣いている姿を見せていた。