リリアーナの誕生日が終わり2ヶ月が経った頃、レティシアはディオルから呼び出され王城へと訪れていた。
 玉座の間にて。王のみが座ることを許されている玉座の席に座っているディオルが申し訳なさそうな顔でレティシアを見る。

「レティシア、急に呼び出してしまってすまない」
「ええ、大丈夫です」

 レティシアはディオルの雰囲気がいつもと何処か少し違うように感じていた。そんなディオルはレティシアを見て話しを続ける。

「レティシア、お前は私の本当の娘ではないんだ。今まで私はレティシア、お前のことを避けてきた。離宮へと行くことを命じたのも私の個人的な私情があったからだ」
「そうだったのですね……」
「申し訳なかった、今更こんなことを言っても、私がレティシア、お前を傷つけたことは消えないが……」

 ディオルからまさかそんなことを言われるとは思っていなかったレティシアは少し驚くが、また平静な顔つきに戻り目の前の王座の席に座るディオルを見て問い掛ける。

「そうですね、陛下、一つだけ聞きたいことがあるのですが聞いてもよろしいでしょうか?」
「ああ、なんだ?」
「陛下は私のことを愛していますか? 陛下と私は血の繋がりはありませんが、それでも娘として見てくれますか?」

「ああ、愛している。レティシア、私はずっと逃げていたんだ。だが、もう向き合うことから逃げることはしない。これからは娘としてお前を愛し、向き合おうと思っている」
「ありがとう、ございます…… 陛下」

 レティシアは少し俯きながら、泣くのを堪える。

「ああ、それと今日、呼び出したのはレティシア、お前に伝えたいことがあったからなんだが」
「伝えたいことですか……?」
「ああ、レティシア、お前をこのアルティリア王国の次期国王に任命する」

 ディオルがレティシアにそう告げると、レティシアは息を飲み、震えた声で返答する。

「次期国王……、わかりました。陛下、私、頑張りますから見ていてください」
「ああ、それとレティシア、お前の本当の父親が今日来ているんだ」
「え……?」
「入ってきてよいぞ」

 ディオルがそう告げると玉座の間の部屋の扉が開いて、レティシアの本当の父親であるエドルが入ってくる。

「レティシア……!」

 エドルはレティシアの名を呼び、レティシアの元にに駆け寄って来る。

「貴方は…… あの日、家にきた……」
「大きくなったな、レティシア。ずっと一人にしてしまって本当にすまなかった……」
「貴方が私のお父様だったのね……、私の父親は誰なのだろうってずっと思っていたの。こうして会えてとても嬉しいわ……!」

 レティシアは心から嬉しそうな笑顔を浮かべて、エドルを見る。
 エドルはそんなレティシアを見つめて優しく笑い返した。

「私もだ。ディオル陛下、この度は娘とまた会う機会を設けてくださり本当にありがとうございます」
「ああ、私も今まで大分酷いことをしてしまって、本当に申し訳なかった……」
「もういいのです。陛下、これからもレティシアのことをよろしくお願い致します」

 これからも自分の娘であるレティシアのことを側で見守っていてほしいという思いで目の前いるディオルに深く頭を下げた。