「あるよ!」


翔くんに呼ばれた。教室の隅でとある写真を見せられる。


「……これ、バレたらまずいよね」

「えっ……?」


スマホの画面に映し出されたのは、私が昨日強引にキスされた時のものだった。

サーッと血の気が引いていく。


「……日和、俺の彼女になってよ」

「えっ?ちょ、ちょっと……ついていけないよ」

「だーから、この写真バラされたら困るよね?」

「う、うん……!だって、翔くんも聞いてたでしょ?ファンの子たちに目つけられたくないし……」

「じゃあ、俺の彼女になって欲しい」

「そ、それがわけわからないよ」


無言になる翔くんの顔は、なんだかちょっぴり怖かった。


「……だめ?」


今度は幼い少年のようにねだられてしまって、混乱を招いた。


「私のこと、好きなわけでもないのに付き合うのは嫌だよ」

「……はぁー……」

「翔く……!?」


ぎゅうっと無気力に私を抱きしめた翔くん。


ザワザワと周りが騒ぎ出すことが、よくわかった。


教室の隅で2人、抱きしめてたらそりゃザワるよね……!?


「は、はなしてよ!」

「俺の日和。みんなー、今から日和は俺の彼女だからよろしく」