朝、目が覚めて。

暖かかったらどれほどいいんだろう

もうずっと、そんなことを考えている


「ひより、入るわね」


聞きなれたドアの音
無機質なからっぽの音


「おはよう、体調はどう?」


毎朝同じセリフ
おなじ、表情(かお)


「おはよう、何ともないよ」


あたしも変わらない
ずっと変わらない同じ返し


「そう.....なにか欲しいものあったらいってね」


くりくりの茶髪に丸い目をした
あたしとは正反対のお母さん

娘から見ても贔屓目なしに可愛いと思う

なのに、あたしといるだけで悲しい顔をさせてしまうから......。


「もう少し様子を見ようって、先生が言ってたわ」

「そうだね、ありがとう」


窓から見えるのは枯れた木ばっかりで。

あたしがここに来た時にはまだほんの少しだけ
桜が咲いていたのに。


「じゃあお母さん、仕事行ってくるわね」

「うん、行ってらっしゃい」


悲しそうな顔

もう何年も、お母さんの笑った顔を見ていない気がするの

どうして、いつから?
こんなことになってしまったんだろう。

まぶしい
暖かくもないのに日差しだけが無機質な空間を照らしてるからだ


やっぱり今日も春なんて来ないのかもしれないって
そっと目を閉じた