翔が心配そうにこっちを見てくるけど、私はフル無視して翔から距離をとる。

もっ、もう無理……、このっ、天然爆弾め!

お前の行動で無力な女子高生が命を落とすかもしれないのに!

「なんだよ、俺、なんかしたか?」

悲しそうな顔をしてそう聞いてくるから、つい頭を撫でたい衝動に駆られるけど、何とか持ちこたえる。

「しっ、してない!……いや、した!いや、してない!」

「どっちだよ!?」

「してないから!してないから、私と話す時は半径一m離れて!」

翔には申し訳ないけど、もう私の心臓が持たない!

その意志を込めて思いっきり腕を伸ばしてガードすると、翔が呆れながら勉強机を指さして叫ぶ。

「分かった!分かったから、一回座れ!教えらんないから!」

       + + +

「……で、ここはこうなるから、答えは三。お分かり?」

勉強ガチモードのメガネをかけた翔がそう聞いてきて、私は勢いよく返事する。

「うん、分かった!やっぱり翔は教えるのが上手いなぁ!頼ったかいがあるよ!」

「へいへい。……てことで、俺のお願い聞いて?」

……ていうことで?

「え、いつからお願い聞いてもらったら逆に聞いてあげるスタイルになった?」

「今日!」

……今日……。

嫌な予感しかしない……。

「片原南さまっ!」

「さまっ!?」

私がそう言うと同時に、翔が地面に頭を擦り付ける。

「一生のお願いです!やっ、山口さんとデートがしたいです!」