「あっ、み〜ちゃんっ!久しぶり〜!」

教室に入ると、学級委員で、翔の好きな華ちゃんこと山口華ちゃんが声をかけてくれる。

「華ちゃん、久しぶりだね!」

そう言いながらニコニコとこっちに手を振っている華ちゃんに手を振り返すと、分かりやすく翔の肩が少し上がる。

「や、山口さんっ……」

「谷口くんも、久しぶりだねっ」

「う、うん、久しぶり……」

翔は緊張でそれ以上喋れないのか、いそいそと窓辺に集まっている男友達の所へ歩いていってしまう。

もっと積極的にアピールしないとダメじゃん翔。

せっかくの華ちゃんの思いが消えちゃったらどうするの?

「……谷口くん、私の事苦手なのかなぁ」

……ほらね。

不安そうに翔を見つめる華ちゃんは、完全に恋する乙女。

分かってはいたけど、やっぱり目の当たりにすると、認めざるを得なくなってしまう。

……二人が、実は両思いだってことを。

「そ、んなことないと思う!あいつ、照れ屋だからっ、誰にでもあんな態度なんだと、思うよ!」

無理矢理、口角を上げる。

「そう、かな……?」

だって、好きな人の恋は、報われて欲しいから。

「うん!きっとそうだよ!幼なじみの私が保証する!」

ちゃんと、心から、思ってる。

嘘じゃない。

「ありがとう……、みーちゃんにそう言って貰えると、安心するっ。だって……」

……っ。

【だって、南ちゃんは幼なじみだもんね】

私が世界で一番嫌いな言葉。

「そ、そうっ?それは嬉しいなぁ〜っ!」

華ちゃんが口を開く前に、私が口を開く。

もう、その言葉は聞きたくないから……。