でも、どこか力強い。

「どこかの学生は、同じクラスの人や先輩後輩。どこかの大人は、たまたま出会った相手や、職場の先輩後輩。どこかのオタクは、自分の推し。みんな誰かを好きなの」

「……それが何?」

「だけど南は、好きになることを諦めてる」

その言葉で思わず顔を上げると、凌くんと目が合う。

「言ったろ?誰にでも好きになる権利はある。権利っていうのは、人が生まれながらに持っているもの。それは、誰にも奪わせることは出来ない」

凌くんはそう言うと、私の頭を撫でて、微笑んでくれる。

「大丈夫、振られても、俺がちゃんと慰めてあげる」

「……凌くん、彼女いるじゃん……」

「うん。だから三人でどっか遊びに行こ」

「意味わかんない……」

そう言いながらも、さっきまで悩んでいたことは吹っ切れていて。

「私、翔のところに行ってくる」

「ん、行ってらっしゃい」

私は凌くんに見送られながら、家を出た。