「うんっ、本当!」

顔を上げて聞くと、華ちゃんは満面の笑みで微笑み返してくれる。

「そっか……買ってみるね、この服」

「ほんとにっ!?ありがとう!絶対に似合うって、私が保証する!」

「ふふっ、それは嬉しいけど、華ちゃんも自分の服探しに来たんでしょ?」

「そっ、そうだった!」

本気で忘れていたのか、慌てて周りを見渡す華ちゃん。

……華ちゃんのこういう所が好きなのかなぁ、翔は。

そう思いながら華ちゃんの後ろ姿を追う。

「そういえば、みーちゃんは好きな人とかいないの?」

近くの服を見ていた華ちゃんが、思い出したようにそう言って、私の腕はピタリ止まる。

「ど、どうして……そんなこと聞くの……?」

「私、みーちゃんに私の恋愛の相談をしてたのに、みーちゃんの話は全然聞いてないなって思って」

そう言いながらまた私の方に戻ってきたみーちゃんは、私がなんかにも言わないことを肯定したと受け取ったのか、どんどん表情が明るくなっていく。

「……もしかして、みーちゃんにも好きな人がいるの!?」

「……ううん。いないよ」

すっかり興奮してしまっている華ちゃんに、絶対に不格好な作り笑いを浮かべる。

「うそ!だってみーちゃんの顔は恋してる女の子の顔だよ!」

なんでこういう時だけ聡いの……?

「……それでも、いないんだってば」

「恥ずかしがらなくていいんだよ!誰にも言わないか……」

「うるさいっ、華ちゃんにはわかんないよ!絶対に叶わない恋してる私の気持ちなんて!」

あっ……。

酷いことを言ったと気がついた時にはもう遅くて、私はほとんど無意識にお店を飛び出してしまった。